浅春

浅春



夕べの肴はたしか
鯛の塩焼きであったと思ふ
総天然色の汁物に春菊が付いていた
蛸と胡瓜の酢漬けに舌鼓をうち
なんと明朗な喩えであろうなどと
ただ云々と感服していたのを覚えている
私的器官に垂直な物言いのけだるい
板の間稼ぎのやうなことをなさるのですね
あるいは化粧の剥げた女人でせうか
そのやうに人に云われても詮無いゆえ
手前はただの米であるから研いでくれなどと
人に愚痴をばかり並べるのである