2017-02-01から1ヶ月間の記事一覧

俯瞰瘋癲

俯瞰瘋癲 晴天もたゆとうて かりかりとタービン廻し もう美ケ原は水墨なのでした 気圏に列なる腕木の雲の あれやこれやを学者のやうに 観察してはノートしたり 目玉なんぞ振り子のやうです あるいは気のふれた楽隊か 陽だまりも発条巻いて 発条ピンのいかれ…

俯瞰戀愛

俯瞰戀愛 こんな片田舎には 身を立てる術など大凡無く めいめい日々辛酸を舐め 工場やらでがらがら働いては 一日の恥を安酒で流し 千鳥でゆらゆら午前の様 私のやうに血迷う暇も ろくすぽ有りはしないもので 有体に云えばこうなのです ダダの輩のろくでもな…

早春狼狽

早春狼狽 ここらはもう 蚊帳のやうな月灯りで なにも憔悴せずとも まあるいやらなにやらで いつぱいではないか 俺は木製の林檎なので このやうな様なのだ たれか小火をおこしてくれ 月に口紅をぬるやうに 夜のカヌレのいつそう暗く だのにこころは透明で ぽ…

電力會社

電力會社 ひいらぎは指先で 風などは手書きでありました ぽふぽふ揺れるステンドに カラメル色のわたくしは 寡婦のやうな心持ちでした あるいは落第した天使でせうか ぴうぴう横切る横切る マルメのバス停にぽつり居て 花瓶の香豌豆は硝子細工 チョークの春…

円錐角膜

円錐角膜 手前のロンパリ眼鏡には この田舎がどうにも独逸に見え いよいよこれはと思うのです あの鉄筋の電波塔なんかは ごつごつとしたゲルマン人のやう (儒徒にも超越論理的な現象が 円錐の屈折率の所為だらうか) 手前など孝悌すらままならず こすつてはこ…

アルトの傘

アルトの傘 トレンチ羽織つた二月の底は 一体どちら様でせうか 雨も惚けて畷もぴかぴか ぽつりと雑居ビルの屋上に居て (原生天は軽く三棟分上にある) 彼処でさりさり鳴つているのは おおよそ俺という存在 三色刷りの念力ですら 空にもいろいろな事情が在ろう…

俯瞰殺風

俯瞰殺風 なまりのなまりで どうにもよくない晩冬だ 文鎮のくもの重さは きつと此のてのひらにさえ おれにはそう思えて さりとて的外れでもあるまいし 心の比重はてんびんです 俯瞰のない行軍のやうでした ゆきもちらちら焦げついて ラフスケツチあさつゆに …

鉄塊

鉄塊 漂白された苺のやうな このぐずぐずの空のした 直流のやさぐれに ぽつぽつ降る雨ゆずは トランとライザと そのやうな兄妹であるやうで 或いは相当に倒錯めいた ひとつの幻覚なのか これこれこのやうな所為で 成程これでは巻紙すらも むかうのくぐもつた…

旧節

旧節 睫毛の長い夜の名も 裁ちばさみでばらばらで あゝ南天なんぞ白化粧 瓦斯燈でくもつた硝子が 障子のやうにみえるのは プラテツクのせいだろうか これはどうしてかしらんと 芦毛のはえた郵便受けに じつとじつと佇む旧節 色鉛筆でたとふなら 一体どのやう…