俯瞰瘋癲

俯瞰瘋癲



晴天もたゆとうて
かりかりとタービン廻し
もう美ケ原は水墨なのでした
気圏に列なる腕木の雲の
あれやこれやを学者のやうに
観察してはノートしたり
目玉なんぞ振り子のやうです
あるいは気のふれた楽隊か
陽だまりも発条巻いて
発条ピンのいかれた所為で
すつかり前に進みません
随分この辺りには風が吹く
どうしてレトロな風景は
だぶつて視えるのでせうか
あの植樹なんぞは鍍金取れて
それきりではありませんか
木組みの三月も金物ばかり
名人や等伯ならば如何様にと
気狂いなのは相変わらず
廃屋の横の水車のやうな気分で
くるくる廻る春のスケツチ