2017-03-01から1ヶ月間の記事一覧

無頼の春

無頼の春 春はちゅんちゅん 床几に突っ伏し 陽も度のあっていない 一度眼科にかかるべきだろう 巻きをくゆらせては 伸びた髪をまとめている 歌留多の上の句やらを 庭にぱらぱら撒いていると これではいかん大火事だ 梯子の上で踊る花粉は きりはり太鼓の日経…

俯瞰貞操

俯瞰貞操 四月もたたらを踏んで あんず飴にベビーカステラ 姉は先ず弟に仮面を与え そうして屋台はトンビです 鮮度のよい春雨通らば せかせかと軒下に匿つて 二色刷りの空を睨めつける この時代のあれこれには よくよく色のあるものでして 洋風に倣えばカラ…

俯瞰喪心

俯瞰喪心 早春の晩、こふこふこんで たまらんと水道管の蛇口を捻り グラス一杯の釈文を飲む 蘭方医よりも覿面にカルキで 俺はようやく消毒された 双子の風はどうしてそんなに 素面でいられる物なのか けつこうで御座いますなどと おれにそつと囁いては アラ…

スプーン匙

スプーン匙 漂白された日光とは めいめいが桃色なので 足湯もブランドという訳です あまりに群青は舶来物で 恋も韜晦する他ありません 白梅のビー玉ころころ 活動写真のフイルムのやうな つぎはぎだらけの春でした もうすぐ小匙一杯の夜が来て やんややんや…

蓬莱山

蓬莱山 此の世の沙汰も 箪笥に薬包紙なれば 畢竟、大業成らずして 春の浮舟カルストの 麓に流るる下物の如く 人も魚も生甚だしき 故事に倣わば夢応也哉 俎板の上の膾にも 等しく春は行き訪ふ

俯瞰洒脱

俯瞰洒脱 ワセリンなのです 言語藝術は オーガスタの痴情も ロダン的省察によれば まさに一つの恋なのです ちいさい小梅の硝子玉 鑑定書のないメルヘンは 簀巻きかまぼこ春鰆

俯瞰波浪

俯瞰波浪 郵便受けのなかは 初恋の味でいつぱいだ あるいは横恋慕か ときおり督促だつたりする せわしく入れ替わる もうおれなんぞは 巨大なコイルの原理で 変圧器のない放電魚のやう 一体どこぞの寓話から 宛名のない便りなんぞは 送られて来たのであろうか…

片思い

片思い(曲後付け) 十八そこらは水玉で ピンクの雨に透ける制服 鏡の前で前髪作つては 校門前で俯いてビニール持ち 赤いリボン下げ待ち伏せる 鳴らない電話と箒の夜と 背伸びで削れたローファーと 恋の踏切はカンカン鳴る 空のブランコはゆらんゆらん ベッド…

此解剖図

此解剖図 蘭学に於ける解剖なるは 実に恐ろしくぎらぎらして あれは前衛的に過ぎる 俺なんぞは韜晦してしまうだらう たといばシェフィールド製 或いは海月のやうな類の 心遣いぐらいはすべきなのだ いくら混濁していやうとも そのやうな鉈や庖丁でなどで 切…

アラビアの夜

アラビアの夜 あたら夜に思ふのです ひやこいのはどういう様だ 白壁に赤字で書いても まるきり酔いの回らない 俺であつたりなかつたりする 烏有なれば正気もさうで ふらふら灌木に寄りかかる 割れた酒瓶からはどばどばと 蝶が出たり亀が出たりで これがもう…