2014-09-01から1ヶ月間の記事一覧

欠画

欠画 三角のかがみ 欠画した秋のつき すすきのに 四角のぶんちん からすのに 五角のなみだ ながしめに 六角すぎては たちおうじやう おうじやうさいて ついの路地うら カレイドのぞいては また角まがる 画の角削り ひたりあるいて スコウプのぞいては また画…

萩 トタン色のそら 鳶の目ころがし ありのままの砂 あくたのことわり十六夜> みのたけ電燈 いなりのおやしろ ランプのとりい いばらのどんてん 鐘の音クレヨン 絵かきのあんてん かんてん色に そまる萩の夕暮れ

二夜

第二夜 こんな夢を見た。 その昔、途中峠の茅葺の茶屋に、みつ豆のおみつと呼ばれる美しい娘が居た。明朗快活な性格に下膨れした頬がことさら愛らしく、多くの人々から人気を得ていた。近江から京へ抜ける行商人にとって、途中越は過酷な道程であった。その…

月見草

月見草 前の無い 月日にあしぶみ 咲くはあき世 手をばいれては 花てつぽう 足のない 初なこいぶみ 憂くはこの世 桶に咲く月 するりと鰻 後のない 闇夜にくるぶし さわるは今ぎわ 鏡をぬつては あくなき空

暗夜

暗夜 灯りはなかつた 縁むすび 暗夜を漕いでは 又、文むすぶ ざまはなかつた 汗をかき 石の路つんでは 又、のぼる さつをこゆれど 櫂のない 舟人ばかりに つと、のしかかる 砂をにぎれど 灰汁だらけ 只、在るのは こがねの月ばかり

詠 人の世に 在りし日の詠 なぞらへど 人の影すら 手にあまりける はなむけに 咲きたるるのは 礼なりし 我が躰をば こがるものかな

蔓 くもりちる かづらつる さみだれ丁 かさぶたの 泪のつぶて ひかりみつ あかまくら いびつな夏 かきむしる

家主の仮面

家主の仮面 靴はいて くたびれて あまもりしたらば 信号の立つ庭に 家主の仮面が ゆらんとたれて あまもりだいたら ハンケチ濡れて 仲なおりしたらば 見本市の恋の 鏡は紅色 ぐるりと廻し はなしあきたら お財布出して あまりもりしたらば 見本市の藍の 雨は…

帰路

帰路 順之助と千代子は幼馴染の間柄であった。互いに数えで二十になるであろうか。順之助と千代子は下校時刻に合わせ、学校の帰り道の畦道を自転車で押しながら帰路につくのが常であった。千代子の黒く長い髪は、初秋の独特な光に透けて、若い女が持つある種…