2014-11-01から1ヶ月間の記事一覧

石蕗

石蕗 冬の空からふつてきた 石蕗がひとつありました 薄黄にひかつておりました まあるいお月のせいでしようか その八重の葉のうらを 舌先でふいとなぞつてみますと わずかに紅がさしました 私はしばし腕木のようでありました

幻灯の月

幻灯の月 しろ色の灯りをけして 浅黄色の夢を着こんで 寒い原野を紅い螢(レイゾンデイトル)大宮あたり下ル あかやきいろやあおいろや(空砲弾→千首)襷をしめた大橋の 酔いのさめぬうちに三途あたり上ル くろやくろやくろやくろやくろ(砂粒→ろくろの恋文)こん…

八景絶版

八景絶版 モザイクの借家に 画家の肉 たべごろの月 しびれた廃屋に 蒲団の耳 たれさがる壁 ねんどのやうな 雷鳴が どうしても なりやまぬ無数の旅館が 等間に並び立ち こずえの泪は くだけてかわいた 方寸ちぎれて 八景絶版 庵からすべり おちたるは 膏のた…

北の大丸

北の大丸 化石の恋文 矢倉の栞乱れ拍子に 白表紙白梅すぎて 北の大丸行つたり来たり 仕出屋さん霜月とんでは 明けのお袋おせちはきつと おばあの餅ほこりの檸檬 おじいの皺師走とんでは くらがえす北野の天満 絵馬破魔矢白梅すぎて 北の大丸

油目

油目 七歩目 六角 錦 油小路 油紙尾の長い 日溜まり 線 京日和の玉瑕 井戸端の女童忍の無い 早馬の吸い殻 碁目 お湯 一尺の 数の子 銀杏 木所処の夕くれは ウイスキイ すみなれた 宿り木の蔓あみこんだ舟の下 橙色の 凄まじさ 秋雨は 油紙ぬけた色 金縛り 画…

デツサン

デツサン 一昨日 おれは複写された ふとカデガンはおつた かた耳ざらざらなる (きみたなじい)一昨日 おれは印刷された たしか木蓮のいろだつた 丁子がぱちぱちなる (おれたなじい)先日 きみは模写された いふのポオジングかいた お医者きいきいやる (それた…

刺殺

刺殺 ゆきすぎし日 濡れた丸眼鏡のむこうは 通常運行(車馬賃四百十円也) お部屋のなかの電鉄は にしき市場行であつた お臼でひいた白墨や うおのたなの赤提灯 てくてくすぎては すぎゆきし火 漬けた商店街のてのひらは 運休見送(煙草賃四百六十円也) 寺町つ…

除夜

除夜 師走ころして ふみ障子すきまの合間に なき黒子牡丹おちては からからり楊枝くわえて からぼたん千里あるいて 編み懸想歯のない暗夜に ひうちいしよめなきいえは 相かわらず絵のない高野は ゆきのない蒔絵のはるは ちくたくと雪洞ともして 茶を沸かす