2015-09-01から1ヶ月間の記事一覧

オーバーホール

オーバーホール 隣家に住む 球体関節人形を わたしはシモンと さう呼んでいた たまに膳を共にし VHSを見ては 風呂に入れてやる わたしが流行病に伏せ けふけふとこむと 隣家に住む 色の抜けた碧眼は きまつて看病に来る 白髪の生えた畳に サボテン植え 煎…

警句

警句 よすがらしぐれて あきのこぬものなし けいくのうらおもて かむもあじすらせじ ともからをつれるも にたりでよつたりで けつそうかえたるは はかのいろのみかな

無題

無題 白黒のテレビは今でも コバルトされた応接間にいる それを確かめるのもよい 錠前に手はかかっているのだから 町内放送のラジオは 都合、四度目の再放送だろう それは確かめるまでもない わたしはここにずっといたのだから

無題

無題 そらの欠片で解剖された 沈黙はなにも語らない ワルツは花瓶におさまって 物色づくレコードの針 いくら月灯のシールを こそこそ集めたところで 硝子の子猫は救えない 透明な二元論にももう飽きた 窓辺に座りあらためて あなたは青い髪を梳くだろう まる…

渡月橋

渡月橋 劣情の額縁に ドーラン塗られて もはや味すらわからない 消印のない金平糖 日活の地下街に (揺れる、オルゴール) 酒焼けした風景は おそろいの午後にたち まるで勘定のあわない空も とりどりに角度を変えて 生き写しのキネマ (色眼鏡、スプーン) 固…

双子の月

双子の月 西館の屋上は 石英水銀の壁紙でした 軽くなったシーツは 古ぼけたト長調 ふわりと行き交う電圧は 麻酔のきいた夜、奏で 双子の月灯りは 梯子を昇れませんでした ジッポ石を装填したり 鉄格子をけっぽったり きぜわしくちかちか 錨のない私のこころ…

無題

無題 暦のないカレンダーを めくるのは誰でもかまわない 千年もの長い季節は いつも病室に飾ってあるのだから あなたはあなたでなくなる いくら目をこすっても 本棚に並べたてられたワインに ラベルを貼られる事はない ホルマリンの波浪が 家にまでおしよせ…

ようじ屋

ようじ屋 インク切れの刻みを コツリやっては ざいなくて、木屋町闊歩 蜘蛛の子ちらして 幾らばかりか半月曇り 荒れる鴨の流れ ポツポツ詰所流れては みだりに引いたり 押したりで、せわしなく 瀬戸物あつめては ボタン止める暖簾やら 裁縫できない濁った酒…