双子の月

双子の月


西館の屋上は
石英水銀の壁紙でした
軽くなったシーツは
古ぼけたト長調
ふわりと行き交う電圧は
麻酔のきいた夜、奏で
双子の月灯りは
梯子を昇れませんでした
ジッポ石を装填したり
鉄格子をけっぽったり
きぜわしくちかちか
錨のない私のこころは
変調くりかえし
ピアノに鍵かけては
くる日もくる日も
吸殻だけが積もります