プレイボーイプレイボール6.5

プレイボーイプレイボール6.5



 僕は僕たちという括りがなんとも茫洋としていて苦手だ。もっと正しく言えば、僕はそれらをガソリンにして走る車に乗っていないから。慎ましく生きて、人の顔色を適度に伺って、それなりの努力をして、ようやく確からしいなにかにすがって日々を生きている。そんな幽霊のような輩がもしいるのなら、ゴーストバスターズに退治して欲しいと切に願う。そんな大それた事をできるのは狂人か、はたまた偉人なのだから。せいぜい半径数メートルの人を愛し、喜び、悲しむ、それが僕にできる唯一で、それ以上を望むなんぞは烏滸がましいことである。僕はあなたを助けることはないし、誰からも助けられない。今の僕に走る理由、それらを与えてくれる物を無条件で愛すだけなのだから。


閑話休題<洋室>


 伊織「お父さん寝たけど、話って?」

  僕「こないださ、バス停で母さんに会ったんだ」

 伊織「そっか」

  僕「驚かないよな、お前って」

 伊織「そりゃまぁ、たまにお茶するし(ピコピコ)」

  僕「他人から見たらそれエア茶会だろ」

 伊織「トトールのお兄さんにもたぶん、視えてるし」

  僕「この町の人ってあれだよな、ほんとに、もうあれだよ」

 伊織「あたしもう存在してなかったりして」

  僕「安心しろ。中学を卒業して、結婚して、子だくさんだから」

 伊織「なにそれ」

  僕「俺さ、もうすぐこの町を出るじゃん?」

 伊織「受かれば東京の大学だっけ?」

  僕「俺が居なくなったら寂しいか?」

 伊織「ご飯作るのがあたしになるだけ、怠い」

  僕「家族ってさ、脆いよな」

 伊織「他人ってわけじゃないけど、案外そうかもね」

  僕「どうして大人になっちまうんだろうな」

 伊織「普通じゃん?てかガキのままのがキモいから」

  僕「大人のほうがよっぽどガキだよ」

 伊織「なにそれ、大人になったつもりですか~?」

  僕「幻滅したくないだけだよ」

 伊織「それこそ人それぞれでしょ、お父さん立派だし」

  僕「そうだな、少なくともこの町ではな」

 伊織「兄貴はさ、トラブル抱えてぴえんなわけじゃん?」

  僕「それはまあ、認めるけど」

 伊織「詠美さんと佑二くんと、それとあとひとり?」

  僕「......おう、そうだ」

 伊織「それであの陰キャと来る日も練習していると」

  僕「後輩のことをそう言うのはやめなさい」

 伊織「でもさ、勉強そっちのけじゃん」

  僕「片手落ちにならんよう、やってるつもりだがな」

 伊織「ま、どーでもいいけど」

  僕「とか言いつつお前、気にしてるよな」

 伊織「そりゃまあ、家族だし、一応は」

  僕「家族とかファミリーって便利な言葉だよな」

 伊織「友達もそうじゃない?」

  僕「家族は選べないけど、付き合う友達は選べるだろ」

 伊織「彼氏とか就職とかもそっか。うん、そうかも」

  僕「お前さ、高校出たら大学行くのか?」

 伊織「さあ、どうだろ」

  僕「俺と親父はずっとお前の味方だよ」

 伊織「そりゃ、ど~も」

  僕「話変わるけど、レベッカっていいよな」

 伊織「フレンズ?」

  僕「母さんが好きだったけど、ようやくわかった」

 伊織「おっそ、もう一周回って時代は圧倒的にパフィーだから」

  僕「お、おう......」

 伊織「レベッカは中二のオケ中に卒業したし」

  僕「そんなん知らんがな」

 伊織「どこで~壊れたの~とか言われても意味不だし」

  僕「お兄ちゃん頭痛くなってきたし、寝るね」

 伊織「こっからが重要なのに!むしろ本題なのに!乙女的に」

  僕「はあ、そうですね」

 伊織「まあ、今度語ったげるよ、遅いしね」

  僕「そうしてくれると助かる、洗い物しないとだし」

 伊織「答えのないものにどうにか答えを出すのが、人なんだと思うよ」

  僕「............」

 伊織「んじゃ、おやすみ(バタン)」

  僕「ど~こで~壊れたの~oh~フレンズ~♪(小声)」