2017-01-01から1年間の記事一覧

俯瞰気狂

俯瞰気狂 冬空はテントのぴんと張り まるきり二ツカや甲類で 窅然とした師走を走り おもいおもいを転がしては 舌で幇間つつみを打つて 油性のオルガンをおれは弾く この線はきつと膾のやうに トレスできるものでせうかと 偽造された心持ちである為 そんな具…

看病品書

看病品書 お元気ですかとよく俺は問い 強いて花にかこつけ出来合いで くよくよするなと鏡面に云い 品種改良されたこいつらの名を 二度と呼んではやるものかと かように召致するたび思うゆえ こんな心持ちではいられなひ 諂いはべつぴんで檸檬のごとく 目に痛…

衒学モノレール

衒学モノレール 若さはフルムーン宝塚 カツカツ歩く女形の襟は 潔癖にしてメイク部屋さ 緞帳あがらば乙女を抱く パチクリと目をやらば 眼瞼なんぞは一等星です よく通る声で呼んでくれ 俺の名をその澄んだ声で ブラウン管に映る日は 山に火事だとうそぶいて …

幻想水槽

幻想水槽 これもゴートと蝙蝠の 合皮ですかとチアノゼおこし あれもそれも千丈の戯言で 俺にもよく麻酔をかけてくれ さうすればまだ間に合うさ 恋慕時雨の冷たく濡れた手に かすかに不時着する体温だけが ボロの毛布もかけてくれ コツトンのそろそろ降りて …

俯瞰唾棄

俯瞰唾棄 山々の鼻梁の柔らかく 白鍵黒鍵の螺旋タラツプです 今朝もおれは水銀で濾した あらゆる苦さや痛さを呑んで そのやうな眼差しをするな まるで投石のやうではないか こんな澄んだセロハンで 息も吐く吐くほのりと白く 矢鱈と枯井戸のスコウプでした …

サロンエプロン

サロンエプロン おまえはいつかさう 白い校舎を建てるのだと かつかつと頬火照り からきし百日紅のやう 手書きにカアルブツセなど 若しおれに改行のあらば どんなによかつたであらうか 二十四箇年も擦り切れて 外は変に明るいのであるから もうこうするほか…

木通とマフラー

木通とマフラー たとえばこのやうに 大崎の黄色もチーフ風で 空から降るコンクリ製 おれは三角州に立ち けぶるネオンに植えられた 天秤鉄筋の変奏曲を それは一体どんな様だ (ここが六曜社であれば どんなによかつたであらうか) 風のついたての分厚い これに…

俯瞰蒸発

俯瞰蒸発 甘いトローチの逗留は どこか錆びた天使のやうで おれは夕暮れに佇む 舌で転がす昼なんぞは 澹蕩の田園を行き来して 白いカーテンで繕つた まるきり田崎であつたのに 空の一面パールの糸くず どうしてこうなるのだ 闡明なれば出来べき筈だ いずれ朝…

俯瞰洗濯

俯瞰洗濯 漂白だらけの封を切り 空から蔓のもたれてきる ねり消しで雲をごりごりやり 終ぞそれでは様の無い 平身低頭のクロワツサン 黴の生えたこの毛布のやうで 茶色い軽視の前髪すらも かかる風情に詠み人知らず 硝子に混ぜた日光の これらは英国ステンド…

杉山トローメライ

杉山トローメライ 俘囚のごとき風袋で 背にもたれるなにものか おまえは古体の簪で 先方のお歴々を前にしても そのやうに鬼灯なのだ それはそれで立派ではないか 得心の行くまで漕いで 金森から出でて果樹園へ はたまたフルムーンの傍まで 風はきりきり砂塵…

ヒデリコ

ヒデリコ べたべたとした 粘土のぽしゃりと止んで ここからはヒデリコか どちらに歩くべきなのでせう ええ、きつとそうなのです ヘンテコな日輪や月光へ 逆向きに歩き出す者もいて おれはひとりここに居る 素足で水面をてらてらやれば もうゆらゆらの遊戯場…

サ変と未然形

サ変と未然形 かじかんだ手をやらば 明礬そのうち転んで やけに金木犀の匂いの強い 山林歩廊で襟を立てては 北風もピウピウ吹いて 形而上水面青鷺遁走 この理科室の研究成果で おれはあの月を射る こんな低い月だというのに まるきり的の外れている ここらに…

驟雨

驟雨 当て字のエチュードは 夕暮れに噛むポッキーで ポキンとやるほど切なくて あれやこれやと荷台に積む 埃のついたガム余り このやうな重なりすら いまの俺には手に余る のべつまくなし繋いでは おかつぱに風船ぱちん たといば琥珀の粘膜あらば いい具合に…

心中モノクローム

心中モノクローム 雨模様の落書き染みて 線の細いやつや太いやつ てぬぐいの調子の狂つた これではまるで看病できぬ かさかさのひらを額に入れ 名無しの権兵衛の芒となり候 このような化粧のあるものかと 納屋に匿うやうに或いは泥棒か へどろのついた窓を見…

俯瞰乱雑

俯瞰乱雑 なればきつと 君も小石なのでせうよ モリトクで髪もまとめた 電気化粧もくもつて これでは納期に間に合わぬ 巧言令色の曇り空を たわしでごしごしやるやうな こちとら例の如くに 無賃乗車でありますれば なんとエイテルのせつない これでは猿捕茨の…

望遠桃源

望遠桃源 若しこの陶器のやうな ぬけるような蒼さの塗材が あればどんなによいかと 逐一、おれはさう思う 強引にごしごしやる度に 風も吹いては文字もぱらぱら 印字のパズルはシヤボンで 日経やら般若のやうだ かびた布団に包まる日には きまつて窓にはりつ…

浴槽図鑑

浴槽図鑑 浴槽で図鑑を眺めていると どうしたものやら夜の分厚い これは火急の用件であるやうで 鯨や鳳などを捕まえる頓智も おれにはまるで浮かばず この竿先の針でオーロラや 延長あるいは意識そのものを 達人や名人はえいとやる そのやうな業を三十あまり…

動揺とクローム

動揺とクローム 黒い毛布はコヨーテで オリオン座から落ちてくる テトラの泪のぱりぱり落ちて 表裏に白紙のさいていに がりがり尖る工夫でもあらば どれほどよかつたでありませうか 交流や直流も病躯になるものでして ケロイドのやうな精神に いつもいつも強…

夏のクラウド

夏のクラウド 手旗はいつも白衣着て 宗風ステンド油絵に硝子 汀に仮面の打ち付ける ビオラももう首をつり そこで踊るビー玉風に おれは白いワイシャツの もうそれはからからの 乾いた余白なのでした 木蓮のこもつた部屋の べたべたの扇風機のなか 拾遺のねい…

無題

無題 こんなきまって 茶色い椅子にのぼる日に そらは高いテント張り 水槽の中の幽体は 適度な室温で ジグザグのそらから 鉱質な糸でできた それらを編んで編纂した オレンジ色の失意や むかうの納屋のぼや あるいはそれに類する 変性意識であおざめた てきぱ…

ボイラーとリネン室

ボイラーとリネン室 八月は黒スーツ とっちらかった町を行く 送電線でぐるぐるで 月の消灯後の 療養所のリネン室は 洗い立てのカンバスで 朝の日光に油彩であるから おれも立ち去るほかない もよりの明かりは 屋上から望む藪ガラシで あとは黒い実のような …

無題

無題 電子波浪の 夏のくも 畦道から見える 高架の上を あるいは白鍵盤か かたこと音立て 金水引の鮮やかな ローカルは 曲線を描いていく 廃線のそらを その両輪で

ひねもす手帖に

ひねもす手帖に おれは杉の群青に立ち 花被の暗いステンド製から 希少銀貨の空を見上ぐ 天線は掘削道につき あちこち切手に綴られる パリパリの風に果房も揺れて ドラムのような空のなか 窓辺にびつたりとついては がらがらと回つていた ぽつねんひとりきり …

無題

無題 蚊帳から臨む 出納帳に登る日は 顆粒の午後保ち これは金蘭あれは銀蘭 がたがたの山路や 朝市で仕入れた天を ぞふぞふ仰いで 歩廊のブナを行く 蕩けるような 在りし日々につくつくと おれは影を踏んでいた それが商人なのです だれかがさう言っていたか…

無題

無題 芹のような心持ちは 白壁ビーズに糸垂れで 外はしあしあ煩い どちら様でしょうか やるかたのない心情も 草丈分ノートしてやれば 心は文鎮なのですから それ相応に見えるのです サーカスに拐われた日 女流なら菫でせうか

無題

無題 なにがしは氷嚢に 枕と異邦人は恋をして 夏の甘草ビオラ鳴れ ファルトの割れた弩の張りを 波浪にならべては ぱちぱちと調子の狂う 弾きの硝子の流れ着いては 天のお供え物になれやと はいいろの風や 物珍しい日々の出来事を よくよく陳情したのですから…

無題

無題 こんな美空のかどばつた ブチも月の額屋へと なみなみグラスに注がれる 茫洋とした一景などは 当然ガス入りなのですから いまの為替で換算するならば 銀貨三枚が相場でせうか(いずれ心持ちも抜け落ちて 只の伽藍と相成り候)

俯瞰休符

俯瞰休符 つむりの窓辺の青さにも ほんのり淡く桃のさし 天然もあまねく心電波浪 あくびの角部屋に トタン屋根も不随する 熟してうまい空の中 行き交うものの凄まじさ 誰もいない廃院の屋上 錆びたおれや物干に ワイシャツやらシーツにも そろそろ色のついて…

俯瞰蒼穹

俯瞰蒼穹 天幕はローソンブルーで どこから波の音のする こちらは凪いで蓬髪くくり 目方のあやうい影を追う まるで印字のかすれたような おれはそれに浮標投げる いくらかぷかぷやろうとも 木目にセロファンなのだから そうして梁はからふねで おまえはどう…

俯瞰狼狽

俯瞰狼狽 あの空の製鉄所で いつもそうだつたのだから これはなんてえ様だ まるきり平仄の合わない 酷いあべこべ細工の姿見にも ほこりのかぶる日もあるだろうよ おれは一人で歩いていて いつもそうであつたのだから それを憐れむ事なんぞ 赦してなんぞやる…