俯瞰唾棄

俯瞰唾棄



山々の鼻梁の柔らかく
白鍵黒鍵の螺旋タラツプです
今朝もおれは水銀で濾した
あらゆる苦さや痛さを呑んで
そのやうな眼差しをするな
まるで投石のやうではないか
こんな澄んだセロハンで
息も吐く吐くほのりと白く
矢鱈と枯井戸のスコウプでした
けれどもおれはこの光様で
ざまあないと冷や冷やしては
いつもこうして炉端に唾を吐いて
剝製の標本のやうな日々を
のべつ幕無しというわけなのです
あらゆる言語藝術を洗濯板で
ごしごしと痩せた心でやつても
具合の悪くなるばかりで
これではもう竈にも立てやしない
おれがいつか標本になつて
誰ぞにじろじろ見られる段になれど
田舎に去つて行きたいと思ふ