2018-08-01から1ヶ月間の記事一覧

無風アンコール

無風アンコール 咲く花のにほふがごとく 与件はさうではないのであるから 日は散りいつしか既往を咎めて おれは花押のないビジヨンだからと いやに外はかぜがつよいから 猶更に不完全性定理ではないのか こころの巣をガタゴトやれども 自然に立つコートの美…

シグナル

シグナル 町のからだについた駅 それは優しい/雨なのだから 距離感パラソル/下向きの雨靴で ふたりは/いつだつて舌足らず あなたがそう/口ずさむのだから 白いバラを/部屋に飾るから この八月の/ジヨウロに耳あてて 波打つブイに/さよなら告げる あなたの声/…

ハーフ夏生

ハーフ夏生 霊亀二年の新川に 錫杖の鳴り手を揉まば 我は風箒に掃かれる葉なれど 木影に絡まり恐美恐美 いくらのやうに日は過ぎにし 神籬ほどに生あらば 苔も生したり清水に岩魚 夜場には蓆を敷きにけれども 転じて天に弓を射らんや 成り立ち不祥の一生なれ…

夢芝居

夢芝居 石光るのは千五百ワツトまでと あるいはノツトでも可し 牧場に相場屋が群がるばかりで 手前つねづね利に疎く こうして髪留めの伸びた具合で タンザナイトの季節には 手を前によく気をつけとやつて 日に二度ほど米を食べ ポラも割れた鏡のやうなのだか…

百日紅

百日紅 若し其れが多年草なれば シルクと月の糸で拵えた 三色刷りの正しさ (なにせ日に数本なのだから) 浅葱のよく晴れた日には 主治医はよく黴が生えるなどと 水桶でぶらぶらやつては このやうに日誌を 先生がカルテをつけるやうに 水泳をした髪をまとめて …

稲積

稲積 そらにたなびくアオザイの あまねく刺繍入りに涕泣しては 行けど行き過ぎ難きなどと 間なしに稲も高く積み上がらんや

ソリチュード

ソリチュード われわれはかく分類される 送料数センチメートルの ギラギラの調度品であると 蔦のからんだころあいなんぞは こころなしか水鏡もげつそり ときおり輪郭すらかちかちなので こどもの背丈ほどの穂なんぞ まるきり舶来のそれなのだから 一握の籾を…

心象ダカーポ

心象ダカーポ おれは合皮のこれらを 石竹やルビーなどと言い張る あまりにそれは透明なのだから 幾何級数的に膨れ上がり たまにシヤボンのやうに弾ける このやつかいな静止の海を どうにか語るすべのないものか なお天は高くごうごうと雨も降る たといば冠毛…

停泊

停泊 そのやうな網にかかるので おれはひたすら櫂をけたぐる 養殖された日光や鯉魚で このーーーー詩賦に舟のあらんと バスタブに浮かべたりもした 糸のからんでしようのない あのちぐはぐの風車が鳴いて ぎいぎいと金属音ーーーー ひとは葦だと案山子は云ふ…