2014-05-01から1ヶ月間の記事一覧

洛中悲歌一

洛中悲歌一 嗟、観月の橋に佳人きたれり 我、七歩の間に平安詠いては 弓、天蓋の日に蒼穹射かけん 昆、敏を以てして礼習いて曰く 師、焦土されにし天は妲己なり 棺、甘露は言を棄て臍に痛哭す 枕、佳人を憂い荘園は鼓を打ち 歩、師の影を追いて歩朽ちゆく 堰…

小町

小町 終電とあやとり小町 柘榴の花といとでんわ 大判のつきのものは はづかしひこがねの夢細工 ろうまんはカレイド鏡 しぼんだ月ならべてへんげ おそらの湿地は湖上に浮いて ここらはいちめんのまんげきやう

花押

花押 からうたは ビードロのやうに ぱきんと五言絶句 はなうたは あそびつかれて こちやうにうわき 百乗のこいは ゆめまくらをたき 香はおどりつかれた つきのかんざし おにわに浮いて 水連とぼうちゆう やまとうたは かざくるまのやうに からからとひまわり

踊り子

踊り子 踊りそこねちまつたドヤ街は 汚らしい、夜のタクトを握る じべたといふ値札のない毒を 服薬して、ものごいひあがつた 踊りつかれちまつたドヤ街で 厭らしい、白のピアノきく ろんごといふ値札のない川を 一瞥して、ものこいかなしんだ てんじやうから…

祇園

祇園 つと三つ指たてた 白無垢の鉄砲百合の 鼻緒がきれていた 若旦那はそうつと摘み こゆびの紅いひもで 鼻緒をすげてやつた ぽうとほおをあからめた娘は うれしそうにわらつていた ちやきちやきとさつていつた ちやきちやきとこ走りで 祇園の宵に花は散りい…

おはじき

おはじき おはじきひとつありました ガラス玉の恋ひとつありました 淑女はカアデガンはおり そろばんはじいておりました ぱちんとかちんと いつたりきたりせわしい 液晶はじくつめのあとは まるで黄粉のやうでした ぱちんとかちんと いつたりきたりせわしい …

なみだ

なみだ おくすりをおくれ おそらからぽたぽた かどのタバコ屋のむ えはがきをおくれ 貝殻はいたぺたぺた こがねをボンからする びんぼうをおくれ まぶたからぼたぼた 牡丹をあの娘にさす はじらいをおくれ ハンケチからぽうぽう 縁日で卍をかつてやる おてが…

調律

調律 六本の弦から美文が 音符にかきかえられてゆく きつとぜんぶおなじこと われらはひとつを調律して あれやこれやとやる > うつくしい数式が 美女とジルバをおどつている きつとぜんぶおなじこと われらはひとつを調律して ああでもないこうでもない> 甘…

電気工事

電気工事 電気工事された夢が つぎつぎと印刷されていく なんというはやさであろうか 三番街の夢をすぎたあたり 人手不足なのであろう 兎たちが労働にかりだされていた まるで柘榴のやうな色をした きみやうな街灯のしたで もくもくと兎たちは刷つていた お…

看板

看板 処女きつたやうな 麻であまれた夜が くるくるとねじまいて 午後十一時を下車した 電車は鵺をはこんできた 二番出口の看板 市松人形たべてひた 飴細工のやうに ぽきりといつたぐあいに ひたひたひたひた 三番出口の看板 夜の艶研いでた 鏡のなかには化粧…

人形

人形 あおぞらとんで るりはくるりと てんごくてんごく くつくつわらう われはにんぎやう けらけらけらけら つきがつつじに あまいみつぬり つみとるつみとる かたいくうきに こおつたひとみが へいげいへいげい あおぞらにつき されこうべたれ われはにんぎ…

千寿菊

千寿菊 さかさにふうせんながれてく 三角定規のカナリアは いびつなよるのかがみだ あけの天女はゆるりとおびをほどいた かどばつた五月晴れは厭らしく マリーゴールドの少女のやうだつた まるで藝術品をみるやうなまなざしで じつとマリーゴールドをながめ…

恋慕

恋慕 露悪的な罪と罰は あいしかたをわすれて (にこのかたちんば) あいされかたをわすれた どれだけたつたであろうか もうどれだけたつたであろうか (にこのかたちんば) こどくすらもわすれてしまつた こころといふのはやつかいな あつかいづらいしろものだ …

蠅 おまえはどうして そのやうな羽音をたてて おれの手からはなれてゆくのだ おれは地獄の蜜の香気をおつた 聖書を焚いている蠅がいつぴき パイプオルガンをならしていた 瓶底湖には天使と蠅がいた モダンな春の一夜の晩餐会 おれの手からはすりぬけてゆく …

電線

電線 三味線ぽろん くれよん空いろ しろいはたはらり とほく叡山まで ケーブルくたびれて ひるさがりくらり 灰はいみなく ちりちりこげて 空もこげはじめた あたりいつたいに けだるい歌がひびき スケツチされてゆく 時計はいみなく ちくたくないて ゆうすず…

わらべうた

わらべうた 月代のやうなぎやまんの 宵のかたまりにおったんや 女童さんや いろは歌留多やらへんか ぱたぱためくる くるくるり まあるで万華鏡のようにへんげして 紫命通りを はらはら踊らはる うらにおもてにせいじゃにちにん みいんな叡山までいくんやで …

卍 卍とかかれた看板が ふるびた二色刷りの念力で ぷかぷかとけむりをふいている ふけどもふけども廻らずに こんこんとエイテルをたらしている ここはいかん ここはいかん 風の折檻がぴうぴうとふいて くうかんが詰め腹をした宵 きよめやうと境内にでむいた …

土竜

土竜 鯉がおよいでいる いくつものコバルトを飼い どこかへたゆとうてゆく 深海はたいくつな恋だつた あるいは森といつてもよい ほらがいがたたずんでいた あまたの月がおぞましく官能し こおつた金属がきんきんなつていた 紙芝居のやうにうつろうては 銀の…

ユーカリ

ユーカリ 陽はおちユーカリ鳴いて バビロンの丘へゆく 焼夷弾くらった湿地に 檸檬の木がいっぽん 透明なステッキそらから垂れた 寒村から太鼓の音が鳴る きつねかたぬきの仕業だろう 瑠璃の いばら野原いちめん 蛍光ラムプがちかちかして 瑠璃の 舶来品いち…

競売

競売 衛星は泪のはごろもをすてた あまのがわの河岸をすぎ 我はしわがれた老婆をレコードした 襤褸をかわりに針におとし ちからのない隕石をふらせた 琥珀の落下傘で我は天上におりた ながいたびのほそいうでを しなやかにくねらせながらおりた あまい桃のに…

田圃

田圃 蠍に調律された田圃がひとつ がたん ごとん ごたん ごろん 鉄道からのぞむ田圃がひとつ ちへい からむ うたう とたん 蜻蛉のやうなリズムでおよぐ ふわり ゆらり くらり のらり 天国のやうなはやさでひかる はゆん くゆん ふゆん きらん 静謐な文を枕に…

夢 都合、三度の夢のあと れこおどのはりが 永遠を孕んでいた そのチリチリとしたおと なんとたとふべきなのか ただ、チリチリとまわる なんとたとふべきであろうか 都合、三度省みたのち 外套をまとうた言葉が いくつもたびだつていつた このキリキリとした…

電信柱

電信柱 ほころびた快楽を 薬莢につめこんで ぽっけにつっこんどく メトロノームみたいに あてどなくあてどなく またあてどなく歩いては ちくたくちくたく歩いて 夕闇においていかれる はゆい乾季がほろびさって こゆい雨期にはいるまでに きみと出逢えたらい…

高島屋

高島屋 茶色い髪が泣いていた 木屋町ですれちがう女たち 長い枝垂れのような睫を ぱちぱちまばたかせながら 活活、闊歩していた 俺はつい、風靡されてしまった 黒い髪が流れていた 河原町ですれちがう女たち 薄い白亜のような頬を ぽうぽうと紅らめながら 渇…

写生

写生 俺は脳から射精したいだけだった 中気は雨水から、砥がれた季節へ とじられた鞄の中の数理的美文に いかれた薬をほんの少し混ぜていた スコッチを薄めたような煙が漂う 肺結核のような咳がこんこん鳴る 唖唖、こんな夜になにを求めようか 真理はいびつ…

少女

少女 月が凪いだら、宴の時刻よ 少女の車輪はしとしとと 夜露に濡れた空気のはがねに 口紅ぬったおっ月さん とおりゃんせ、とおりゃんせ スピカをお指でなぞりなさいな 地獄に恋文ちょいとしたためて 辻のお犬に悪戯なさいな 宵の口には鏡のなかで 耳朶噛ん…

雨上がり

雨上がり 五条別れで逢いましょう 去りぎわに云いましょう それはふたりの合言葉 いつもいつもいつまでも 三条大橋で逢いましょう 雨上がりに云いましょう これはふたりの鍵言葉 どこもどこもどこまでも 先斗町で逢いましょう 夕闇に云いましょう これはふた…