2014-05-15から1日間の記事一覧
蠅 おまえはどうして そのやうな羽音をたてて おれの手からはなれてゆくのだ おれは地獄の蜜の香気をおつた 聖書を焚いている蠅がいつぴき パイプオルガンをならしていた 瓶底湖には天使と蠅がいた モダンな春の一夜の晩餐会 おれの手からはすりぬけてゆく …
電線 三味線ぽろん くれよん空いろ しろいはたはらり とほく叡山まで ケーブルくたびれて ひるさがりくらり 灰はいみなく ちりちりこげて 空もこげはじめた あたりいつたいに けだるい歌がひびき スケツチされてゆく 時計はいみなく ちくたくないて ゆうすず…
わらべうた 月代のやうなぎやまんの 宵のかたまりにおったんや 女童さんや いろは歌留多やらへんか ぱたぱためくる くるくるり まあるで万華鏡のようにへんげして 紫命通りを はらはら踊らはる うらにおもてにせいじゃにちにん みいんな叡山までいくんやで …
卍 卍とかかれた看板が ふるびた二色刷りの念力で ぷかぷかとけむりをふいている ふけどもふけども廻らずに こんこんとエイテルをたらしている ここはいかん ここはいかん 風の折檻がぴうぴうとふいて くうかんが詰め腹をした宵 きよめやうと境内にでむいた …
土竜 鯉がおよいでいる いくつものコバルトを飼い どこかへたゆとうてゆく 深海はたいくつな恋だつた あるいは森といつてもよい ほらがいがたたずんでいた あまたの月がおぞましく官能し こおつた金属がきんきんなつていた 紙芝居のやうにうつろうては 銀の…