2016-01-01から1ヶ月間の記事一覧

離別

離別 このやうな膏のついた べたべたした日光やらを 湯呑にすこし浮かべて 床几に頬をついていると いつもさうおもうのです 頭の中のきれかけの 白熱灯のやうな具合に 或いは古いキネマのやうな あゝあゝ、ざらざらとする 白樺の梢にざら目の小雪 かちこちで…

毘沙門堂

毘沙門堂 灰皿にふり積もる こんな雪もあるものか たれかれにも、あゝ 辺鄙のカトレアすら かうして小さくなつている 頁をめくる日光に (伽藍いよいようるさく) おれはぺこりやつて 地蔵はすいからであると たださう言うだけで 糊口をしのげるのに おれに刺…

キネマトロジ

キネマトロジ 空飛ぶテレビは ひくいひくいカツコウです なにいろもよせつけぬ なんぴとたりとも 方眼紙の田をぬけて (あるいは舗装されたメヌエツト) こなもふいたははばたかせ これらは蒸気水銀と シルクの雲とのアマルガム 蛍光色のあさがきた (おまえは…

ダフニスとクロエ

ダフニスとクロエ 長いコートは ステンドグラス製で 午后のla mer 流れ着いた小瓶 ダフニスとクロエは 宛名のないわたしやら となりに侍るわたしやら へたくそな風景画と もう乱反射しては あらゆる角度と色合いで 風景はモノローグ わたしの左眼の時計は 50…

雪恋

雪恋 シートベルトの黒髪 成程、ああそうか ろくに歩けもしないわけだ 丁度、珈琲こしたあとの おれはそんな色合いで 艶やかな口紅さして まるで千両のやうな色 なんの花にたとうべきか おれはトチノキで こういう風体ですから ベッドのシーツは 露悪ヘルツ(…

独楽

独楽 独楽のやうです 踊りつかれたらそう 唐土からきた砂塵 てのひらにざりざりと いつもさうでした くわんせいの法則なるは こころにも働くやうで 句読点ばかりが 畳に転がるのでした かたい枕のやうな 雲霓のむかうに はや咲き梅の京女 振袖、色剥げあてど…

接吻

接吻 誘拐されたチョーク色のドレス さほども手間のかからない めぐすり貼りついた少女Aは 睨め付ける、空の黒板を 銀色の風はガムで出来ていて いつもこれこれこうだと 説いてまわる教師やそれやらを ほつれた糸くずのやうな 髪をくるくる指でまわしては ど…

からふね屋

からふね屋 シフオンの小路を 音符の花束で敷いて 黒鍵は黒猫の亡骸か それでも空は白くて 冬の日向のベンチに おれではない誰かが いつも隣に座つていた これはドツベル言語か 太陽に毛布がかかり 水銀灯もちらほらと ここら小雪のふりかかる あなたにも積…