2018-04-01から1ヶ月間の記事一覧

無題

無題 いつもどうしてこの辺は 明朝体の庇髪ばかりで 非売と貼られたアラビア数字 MSゴシックは嗜好の類で コート紙で厭にざらざらした このやうに雅号も飛んで みどりのいつさう暗いのだから 水揚げされたオノマトペや 万里に連なるこれらの城壁群は 片田舎…

心象ダビング

心象ダビング このダビングは 鮮度のよい 春雨の中に 庖丁を入れるやうに 四行は動ぜず 生業という 連写機に 天日干しに柑橘 ランプの魔人の立ち昇る 分業なればどれほどか くすしの調剤した 鏡台はフオルテの丘 立見のピアール婦人 この舞踏と調律 優しい慈…

アパートと隣人

アパートと隣人 荒れはてた廃屋シャープには 四角に浮かぶ花もなく、 前後に断絶された木蘭すら おれには有難いものであると 丁寧に封をした景色なんぞ まるきりオルガン調で揚羽なのだ おまえが翅を活計にする為、 町々で首を垂れているあいだも ここらの土…

無題

無題 てつくずの諍いの前科も グリッドの林の中に投げられた それらを変形やカットなどと呼ぶには あまりに前衛的にすぎるのだから おれに張られた送電線なんぞは チカチカの烏賊のやうになっている これら一連の天の釈文の大凡は はりがねにシャボンで屑石…

超越考察

超越考察 義眼の烏は己が故に 十六鏡、あるいはーー撚糸 卯月の田んぼに線はなく あまりに非解剖学的であるから 柔らかい布のやうな風や 乱視ーーあるいは過矯正の空 あらゆる物が光学から脱走する たといシスレーであらうとも どのやうな色彩かーー手は光り…

二行スケッチ

二行スケッチ 下弦の月は版画でこぼこ 朱色の部屋 墨色の庭先から 渡航する胞子を眺む 練り消しと水風船は 白紙のクロック 物自体に描きこむ徒 俺はそいつらが恐ろしい 肢体についたあの暗い あのべたべたを どうこうしようなどと 正気の沙汰ではないのだか…

主観乱気

主観乱気 頬に生えた苔は落第生で 静止したうなじはロザリオ ともがらは剽軽で 芥子もついてベタベタだ おれにまとわりつく 笑窪のあれらの恐ろしい あらゆる省察も諂うからと 貴女はヘアピンを曲げる このエチュードの線は 空間と延長に投擲されて 香料のみ…

四行足形

四行足形 付箋のタルトは模様変え あらゆる方便を詰め込んだ 紙芝居のような情景と小瓶 ステップの誘惑は甘い珈琲 軽い温度のあるならば チューリップも逆さまで 中廊下テレフォンは小紅 のぼせるまで蜂蜜の芝居小屋 デンデン太鼓のピアス揺れ 目張りのはり…

こころ装丁

こころ装丁 春の悪戯にちがいない 肘にふわりと手をやるのは 雑にまとめた髪を結い 或る女の日記抄を 俺もインクの薄れているから よくよく霊験あらたかで 窯でがらがら活字を洗つて 定規のように精緻でないから 未だに草色の装丁であれと そのやうに戸を叩…

流動性と足形

流動性と足形 長い旅路は背広の皺で 土瓶蒸し或いはプリンのやう 中山の料亭のどんちゃんを おれはもう桂むきなのだから こんな足形で春を踊るのも 水辺に立ち、何度目だらうか 夜は何事も許すだとか 井原は処女作に記していたが このステップの流動性を 湖…