こころ装丁

こころ装丁



春の悪戯にちがいない
肘にふわりと手をやるのは
雑にまとめた髪を結い
或る女の日記抄を
俺もインクの薄れているから
よくよく霊験あらたかで
窯でがらがら活字を洗つて
定規のように精緻でないから
未だに草色の装丁であれと
そのやうに戸を叩く
カルキカレハナキワカレ
雪洞レールの一列か
まともな調律師のいない
そんな抄のあつてたまるかと
ひどく狼狽するばかり