2016-02-01から1ヶ月間の記事一覧

Chimaera to Ore

Chimaera to Ore そしていつもの黒縁は 擦り硝子のピンボケです (具合の悪い揚羽蝶 苔の生えた指先、灯る) 額の夜道に飛ぶ花粉 絵の具の飛沫かもしれぬ 金箔のそいつらも きちり油絵に納まつて (指紋のべたついた翅 お前はそれを売るのだ) 麹や味噌なんかや …

ケイナワ

ケイナワ 三面鏡は日照りにて ひだりはぎらぎらし みぎなんぞはまあ酷い 面を耕せども耕せども 化膿した小石を投げ 瓢箪のやうな方寸に 箪笥と喩うべきなのか 皺だらけのあやめの池 無精も生えない畑にも 土手にならんだ白梅で ケトルもぴうぴう鳴る どうぞ…

二月二十八日

二月二十八日 俺の鉛のマントは 黒板の穹を射ています (あゝ、これも遅刻の おんぼろの言い訳なのか) 蒼穹の波浪やら 字引きの髪留やらで 工夫をこらしては これも乾いた覗見です (あなたは均一なのですか いいえそのやうな筈もない) 玻璃のギヤマン人形 完…

女郎蜘蛛

女郎蜘蛛 こんなしみったれた 月夜の晩に、春を思う 金平糖のこおりは からからと ひかりの浮標なげ 太巻もぷかぷか 丁稚も立派に背広着て 春の、中へ きみも行くのです 看板むすめさん あゝ、春はまだかい てな事仰いましたかね 骨に花吹雪と ろくでもない…

無題

無題 あなたはいつも なだらかな砂丘にいて 星座をつかまえる ケージや貝殻 スチール製の椅子 或いは本棚なんかに たとい温度が なくたってもいい どうか、 こころに句点を あしのない影も 背伸びにあくびこらえ 四角いあきばこに かくれんぼうで 悪戯にゆれ…

医療監督

医療監督 樽のなかに軟禁された あざのない子ども なまりを取り出して 熔解して市場へと これはもう変わりませんか 監督と呼ばれたり ときにお医者と呼ばれたり おれはいつたいだれか メチルの香水やらついた きついきつい臭いに 曇天すらもかどばつて ぴか…

水浅葱

水浅葱 雪どけの柳ケ瀬 鉛筆のトンネル抜け くるま引く乳母も えちらとおちらと これもまた変わるので 南天の其れとてや 縫い目と県境とおれと 暗転する洋菓子は かんかん鳴る鳴る そらは水風船で ぱちんと割れては みぞれやどれみを あちこちにふらせ 冷た…

無題

無題 三本脚の洋琴も 屋根にぶらさがった 歯抜けの鍵盤は きらきら星の変奏曲 鉄筋でこした珈琲を飲み その硬いフィルタで 左にいったり右にゆく ヘボンの音符眺めていた 偶にはタールもやった ぴうぴうなる薬缶や サイフォンのだいだい 亜鉛で拵えた部屋に…