2020-06-01から1ヶ月間の記事一覧

プレイボーイプレイボール3

プレイボーイプレイボール3 小高い丘の上から、夕暮れのこの町を見るのが僕は好きだ。まるでプロットのない小説のように、あちこちに人や車や電車が行き来して、勝手に生きて、勝手に一生を終えていく。一見、野放図に見えるけれど、軸がしっかりとあって、…

プレイボーイプレイボール2

プレイボーイプレイボール2 僕はあの時、夜のピアノの音色を何色だと思ったのだろう。トーンにもたぶん色があって、大体が水色だったり、気分がいい時は橙色になったりする。よれたYシャツの皴を伸ばすように、僕は小さい背を伸ばした。何もない部屋に貼って…

プレイボーイプレイボール1

プレイボーイプレイボール1 僕は自転車のペダルを漕ぎながら、七月の入道雲を見上げた。緩いカーブを描きながら爽やかな風が、シャツにべたりと張り付いた汗を乾かしてくれる。一昨日十八歳になったらしい、この僕の家庭は早くから理由あって、父と妹と僕の…

彫琢未遂

彫琢未遂 偏に彫刻と云いましても 半紙の前に数多ある信号機ほど あるいはてにをはの縁日ですから、 理性的な隣人を持つています。 ひとつ、家政系の女学生のやうに、 ミシンでがたがたと縫い合わせるか ふたつ、美大生の辣韭のやうに、 半貴石のファンデー…

理にかなう演題について

理にかなう演題について 垂直にフレームにはいりこむ その手縫いの角度は悠揚であるから 疼痛をモノ消しでごしりとやり また頭のなかの魚に聴診器を当て どかり肘掛椅子でお医者はまだかね いかにも公電のやうにやるから お客は断乎としてそれらを認めない …