プレイボーイプレイボール7
プレイボールプレイボーイ7
7回にも入ってくると季節は当然のように秋を迎える。地方に住む普通の男子高校生なら気の利いたポエムの一つでも書いて、自分の青春を締めくくり、銀紙のような白い息と共に、青春を卒業するところだろう。それは小さな公園にあるモニュメントであり、かつて遊具であったもの。塗料はすっかり剥げ落ち、みずたま状に褪せた赤色がポツポツと広がっている。彼女は木枯らしの強く吹く中、その巨大なモニュメントの上に物憂げな表情を浮かべながらポツリと座っていた。僕たちはいつだってそこに居て、いつだって居ないのだ。いつだって。
閑話休題<立体物>
僕「よお、寒くねえか?」
九塁「......」
僕「缶コーヒー飲む?買ってきたけど」
九塁「ああ!負けじゃ!無能監督!働けクソ打線!」
僕「あ~、片耳ラジオで野球中継っすか」
九塁「あの場面でゲッツーってバカなんけワレ」
僕「とりあえず飲んで落ち着け、んっ」
九塁「すまぬ、取り乱した」
僕「弱いチーム応援してて楽しい?」
九塁「楽しいわ、たまに勝つとスカッとするじゃろ?」
僕「神様稼業もストレス社会なんすね」
九塁「別に稼業ではないがの」
僕「目標とかノルマってないの?」
九塁「あると言えば信じてくれるのけ?ワレは」
僕「なんでお前らって存在してんの?」
九塁「野球に四球と死球があるのに疑問あるのけ?」
僕「わかりにくいなお前の喩えは」
九塁「ラブコメ漫画に当て馬がいるのに疑問あるのけ?」
僕「それ逆転勝ちしたら気持ちいいやつ」
九塁「お前が必要だと思っているから儂はおるのよ」
僕「......そうかもしれないな、うん」
九塁「で、どうするんじゃお前」
僕「どうもこうも受験も練習も頑張ってるけど」
九塁「マークシートにはあっても野球にはのう」
僕「たらればはないけど正解もない」
九塁「それでも投げるのけ?」
僕「んなもん、投げなきゃわかんねーだろ結果なんて」
九塁「その割には保険をかけたのお前は」
僕「負けたらお前とここで生きていくしかねーな」
九塁「存在が認識されなくなった場合の仮定までしたけ?」
僕「そりゃ、まあな」
九塁「静止した時の中をさまよう業じゃぞ」
僕「マウンド降りようかな」
九塁「そもそもお前はあやつを好いとるのか?」
僕「......まあ、たぶん」
九塁「ならばさっさと告白してしまえ」
僕「わかんねえんだよ」
九塁「なにがえ?」
僕「そういうのに慣れてないっつーか」
九塁「阿保け?」
僕「んだよ、わりーか」
九塁「お前は紛い物と本物どっちが嬉しい?」
僕「そりゃ、本物だろ」
九塁「なら素直に全力で投げたらええ」
僕「俺の気持ちがもし紛い物だったらどうする」
九塁「違うと感じたらこっぴどく振れ」
僕「容赦ねえな」
九塁「覚悟がないなら賭けに乗らんことじゃわ」
僕「ほおっておいたら壊れるからな」
九塁「モヤっとしとるから相談にきたんじゃないのけ?」
僕「まあ、そうだけど」
九塁「元より壊れない関係なんてありゃせんわ」
僕「どうしてうまくいかねえもんだ」
九塁「別にアレも本気で言ったわけじゃあるまいよ」
僕「あいつの空波形ノイズだろうからな」
九塁「どうしようもなくなった時にお前ならどうする?」
僕「考えて、相談して、ちゃんと手順を踏んで」
九塁「それから?」
僕「そうだな、足掻く」
九塁「人間は愚かな生き物じゃからな」
僕「神通力みたいなの授けるイベントはなし?」
九塁「おろか者」
僕「じょーだんだよ」
九塁「この町はいつまでもお前にやさしい」
僕「わーってるよ」
九塁「その気の抜けた炭酸みたいな口調」
僕「バーカ、こいつはなぁ」
九塁「なんじゃ?」
僕「チェンジアップってゆう魔球なんだよ」