2015-08-01から1ヶ月間の記事一覧

電柱理論

電柱理論 電信柱は ネクタイ巻いて 下向きながら 新聞を読んでいた まるでアイロン かけたように しわのひとつなく すつくりとしたおれや マネキンのように ねりけしで顔を消された 通りすがる人々たちを その新聞の穴の中から じいつとみていた 斜視のあな…

迷い猫

迷い猫 月はまばたき (西欧でいうウインク) トンネルあいて ぴうぴう吹いた 点いたり消えたり 往来も、せわしない 痩せたろくでなし (微熱レコード廻る) 赤提灯ボタンを 縫いつけかけちかう かけつけ三杯ぶん 月のインクを飲んで ぶんまわしては 店じまい、…

掛時計

掛時計 ころあいみて 張り替えた障子は 化粧水のやうで べたべたしていた 風のはなびら 狂い咲き、でも 灯りはともらない ともはたらき 焼畑のにおいを 空の花瓶に詰めて 額縁にいれて 異邦人をじつと見る 骨のない家は まるで子供のよう 狼はいないけれども…

処方箋

処方箋 色白の告白は 前髪に少しかかり 薄紅の痛み止め 二錠ではきかない 悪寒も戯れ ひどく病的だつた ふいうちの 便りを待つひび それはなまくらで いやでもなまくらで 煮ても焼いても なみだは壁をうつ 浮いた義理すら ここにはあるのに おまえにはない …

所帯

所帯 よるの太鼓の あまりにひどく 嗚呼、糸の河 流るる血たまり かちんと鳴る もうもうはかない むらさきの 暗いせともの 背に佩いて あてどなく、 ゆらんゆらん 鈴虫おいかけては ほとほと、まいりて 頬紅の艶の出来 雨のみ綴りて ゆくばかり 火消しの鏡、…

南瓜

南瓜 日記に縫いつけた キヤタピラない日光や えびそりかえつた 青空いくばくも 松のはやしに ほうしいつくつく おろしたて 月の大根 軟膏つけて おそろの影を ふんだりけつたり ややこせわしく 字面通りを ああでもない こうでもないと レイゾンデイトルを …

けんばん

けんばん おそろしやいと こうべたれては まだおんぼろで あせだくだくといのりのあしは ぽろぽろかなで どまでせいこう ぴあののおとはちぐはぐきこみ せのびゆうくれ あまずつぱいと おもつたころにゆうとぴあとは ことあるごとに さあかすだつた おもては…

蒸発タブロイド

蒸発タブロイド 跳んで、折紙 色とりどり 盗んだ季節を ポラロイド (くだらないと) まさぐるやじるし 方位はずれて そこかしこでまるで 俺は着せられた (やはりそうです) こましやくれた 顎のない机たちは かどばつたエイテルを どばどば刷つて (ともだち…

西館電燈

西館電燈 わたくしは 十三の月を下車した かみを梳くやうに 稲穂はゆれ またわたくしは 青い戸をたたいて 廃院の屋上に いくつもならべた トランプや 失語症の洋服を おきにいりの それらもかわいて あおざめては ゴシツク調の符や ひびわれた月や 便りの入…

秋茜

秋茜 明日は高楼 手酌の線香花火に あぶら売つては 矢つぎばや くるひもくるひも 四の五の云わず しつくと佇んでは こう申すのです よく手入れされた ものですな、と 又、驢馬を 河原にうつて やけに耄碌した的に 俺は矢をかまえる つんだ泪のため池は 北の…

在る、電算とニッキ水

在る、電算とニッキ水 湿地帯はなかもずで あるいはニッキの空瓶か そらいろみずみずしく 合成硝子ばりついて おれも一体全体どうして汗を こうしてかいているのかと むぎわらのなかでふとおもう どうにもこうにも かいてみてはまたかゆく 広辞苑は油がみか…

町音

町音 火の娘にさそわれ タイポグラフは蔓のまま 揺れる表記、雨けむり とぼける半目こすつては 焼けた素肌に糸とおし おし通る小路の結び 米粒ひとつ、頬つけて ありんしたとつぶやいて そんなこともありんしたと 受け口でそつとつぶやき 河岸に肢体をあずけ…

盥吊り橋も手ぐすねひいて 黒板のうえではねる岩魚も からんころんと白墨で ひくらしもきつとそのやうか 馬力の八月かけぬけて ほおにつたう汗きつと ため池つくつているのだらう ひかりぬぐう風きつと この池つくつているのだらう この、ただれた憂鬱すら …

心象現像

心象現像心象ノワール ホチキスで止めて またばらして そんな熱病があり 景色をパチンと なんどもパチンと とめるばかりで わたしは改行され 現像されずに 仕舞いには其れを 諦めるのでありました