西館電燈

西館電燈


わたくしは
十三の月を下車した
かみを梳くやうに
稲穂はゆれ
またわたくしは
青い戸をたたいて
廃院の屋上に
いくつもならべた
トランプや
失語症の洋服を
おきにいりの
それらもかわいて
あおざめては
ゴシツク調の符や
びわれた月や
便りの入つた瓶やらが
空から空から
ながれついてくる
まるで流木のやうで
憐れみの風は
それでもそれでも
名などないと
きちんとおさまり
モノクロで
雨どいしめては
染みついた
白熱灯のピアノに
かわいた薪くべ
ひもじさを
じつとこらえた
空でまわる
洗濯機と車椅子
月の指輪にはめた
十号のリング
どうにもこうにも
わたくしの背丈には
ふぞろいで
月の糸あんでは
おもはゆい
青い戸たたいて
ひとり屋上
白衣着たアンペア
かわかした