2014-04-01から1ヶ月間の記事一覧

シモ―ヌ

シモ―ヌ さようならなんて ラピスラズリの石ころさ 窓辺に揺れるカーテンさ 春風はタルトみたいに甘いんだね 恋を盗んだきみの名を 僕はシモ―ヌとよぼう あいしてるなんて 壊れたラジオの言葉みたいさ ポラロイドの消毒液さ 夏風はティラミスみたいに苦いん…

雨傘

雨傘 僕はきみが好きだ 血よりも濃い塩水の底で 貝殻を集めた、雨が降る しとしと臭う記憶の波止場 赤髪の鬱が傘をつたう 気狂いの金魚は唄いつづける 僕はもう星めぐりにあきた 凍りついた傘が振動する 歩く、歩く、歩く、夜は迷う 深海の砂漠に旅人は恋慕…

怪盗

怪盗 お月さまを盗んだ少女と羊 羊は銅貨を洗い、時は名を告げた 栞にはさまれた少女は御伽噺のなか 面相のない夜は、書庫の中で眠りつづける めえと鳴く銀紙の簪が揺れている シトリンの羊は螺旋階段をあがる 少女はいばらのひとみで夜をみつめる なのるべ…

金魚

オマージュ 猫の目みたいな月に どれだけレンガを積み上げたら とどくのだろうか くぐもったガラスのむこう 水槽のなかの魚は 夜空を見上げながら ただよいさまよっていた 誰も来ない部屋にいて どんなに朝が来ない事を 願うのだろうか いくつもの日々のむこ…

猊下

廻転式の雲の掌に エラン・ヴィタール、猊下 八千代の廻船のうえ、鷺は哭く 衒学は狂水に浮く落葉の如し 首塚の地下鉄道に ものみなるプロレタリアの群れ ぎいと鳴るは新緑の淫らのみか 露と鳴るはざら版紙の野原のみか

風景

風景 10:00 起床。モノクロのテレビジョンが脳の中に入ってるような感じがする。ひどく、ざらざらした音が鳴る。泥人形のよう。 11:00 斎藤緑雨を読みだす。僅かばかりも光明を見いだせず。投げ捨てて煙草を吸う。ホメロスに光明を求め、オデュッセイアを少…

序 わたくしという暗い系列から 赤い燐粉をもたらすもの 純粋天国はノートのきれはしをたべ 一千光年先のノクターンを奏でる これら永久機関を搭載した言語表象は 北の凍土からくる緑風の因果律にのり 気圏のすみずみに熱の限りをばらまきます (垂直に亜鉛…

拳銃

拳銃 ひばりの泪の拳銃 遠く彼方に鐘は鳴る 空に停泊したオリオン座が 銀河の馬車鉄に乗車せり それはあてどない旅なり 春の呪詛には恐ろしひ あまた過ぐる日々 我は白髪の使者なり 一錠のオーケストラを奏で 地獄のへっついに立つ者なり 王宮には襤褸をきた…

永遠も半ばを過ぎて

永遠も半ばを過ぎて ああ神よ、われ飲みて一滴もあまさず しかる後、杯を神に投げつけたりき 砕け散りにし正義の破片は干上がり われが酒神に捧げし一滴をも その破片に吸い取りたり されど神は忍耐深く、色濃き葡萄酒を 後の収穫のために送りぬ あまたの月…

いばらのはら

いばらのはら いばらのはらの電電松 くすんだ日は を ぬりかえ (雀蜂クル!トマル!) 戦争が乾季をこえて トタン トタン 原宿あたりでははやんでいる 二色刷りの念力で そうするべきなので 祈る いばらのはらは聖堂である 蝕ばった蝕ばった

野苺

野苺 日々ノイチゴ あぜ道歩いてく 素敵なお嬢さん とおりゃんせ お月に電信柱 あぜ道歩いてく ルール破りは とまりゃんせ 瞳の奥の部屋に どうぞ僕をご招待 星屑イチロー 夜空走ってく 素敵な王子様 とおりゃんせ 骸骨傘の女 立ち止ってる わあと泣く泣く …

独白

独白 純粋持続の花束と べっ甲の市松人形 ビードロの蔓が生え 美女に庭師は平伏す さもありなんと わたしはおもひ いまいちど蒸気になり わずか冒頭の三行に 亜鉛の幻想を省みん おおよそ天におそろしく またそれは獄に抱くには あまりに甘美すぎるのだ 郡山…

地獄篇

地獄篇 早馬を狩る春の矢は、河上を滑っては跳ね、滑っては跳ねを繰り返す。鳶のように、伝馬のようにいそいそと駆け廻る。 「旦那、ここには地獄なんてありゃしませんよ」 そう女は云うと、細長い白い腕で煙管を小袖から取り出し、欄干に持たれながら火を入…