雨傘

雨傘







僕はきみが好きだ
血よりも濃い塩水の底で
貝殻を集めた、雨が降る
しとしと臭う記憶の波止場
赤髪の鬱が傘をつたう
気狂いの金魚は唄いつづける
僕はもう星めぐりにあきた
凍りついた傘が振動する
歩く、歩く、歩く、夜は迷う
深海の砂漠に旅人は恋慕した
乾いた狂気が田園にばらまかれた
おそろしい!これはおそろしい!
デキャンタされた7thcodeが鳴る
振動は一握の砂を揺らしていた
壊れた時間が追い出された
僕は君が好きだということ
深海にはさまれて、僕はそれを飲んだ
僕は渇きつづけた、雨傘も渇きつづけた
あなたを知りたい、僕は知りたいのだ
一合の甘露のような甘い夜は
落ちることすらもうゆるされない
亭、亭、亭、亭、亭、亭、てふ
夜は溶けた引力のようなものだ
海藻が海馬をかけぬける
天井が痒い、嗚呼、痒いのだ
無花果の灰皿が燃えている
君はもう、星めぐりに飽きた?