怪盗

怪盗






お月さまを盗んだ少女と羊
   羊は銅貨を洗い、時は名を告げた





栞にはさまれた少女は御伽噺のなか
   面相のない夜は、書庫の中で眠りつづける





めえと鳴く銀紙の簪が揺れている
   シトリンの羊は螺旋階段をあがる





少女はいばらのひとみで夜をみつめる
   なのるべき名を、もはやもつことはない





羊はなお金貨を洗い、時は名を告げる
   ひかりのオルガンが少女を照らす





鯨の赤い糸をつたってひかりはおりる
   お月さまは少女に恋をしてしまった