2015-01-01から1年間の記事一覧

無題

無題 ポプラの木でできた 砂時計のなかに ひとりぽつねん座り 灰やらがいりまじつた おまえやおれも 鼈甲いろに染まつて 鏡面仕上げで そらもうもとどおり (かつて皆が そうであつた様に) 廃屋にもかちこちの 射手座がおちて 黒曜石の雨戸にどんぐり かんか…

輓近情景

輓近情景 革靴のすりきれた がりがり働くあの真っ暗な むこうにへばった ひとあらば 雑木のむこうも真っ暗で 吐いた唾もつららになり 月のシャボン なお暗く 心電図にうつる オルゴールの透明に ニッキの雨が (飴雪になればいいと思ふ) いたがねのない まん…

斑猫

斑猫 酔いもねぇ、 やぶさかならば おまえもそうかい どう暗いのかて 行儀ぬってあった 銭もわちゃつく 壹錢あたりで しこたま呑んでも うちにけえれる 上背の灯りもない こんな夜道に 班描がいっぴき

虹彩線路

虹彩線路 赤いアイリスに まくら木は横たわり (déjàvu)+(déjàvu) 連結された風景は クリップでとめられ (déjàvu)+(déjàvu) パラパラパラと おれのあしもとに ≠déjàvu 焼かれたネガの 駅名をおれは尋ねる

オーバーホール

オーバーホール 隣家に住む 球体関節人形を わたしはシモンと さう呼んでいた たまに膳を共にし VHSを見ては 風呂に入れてやる わたしが流行病に伏せ けふけふとこむと 隣家に住む 色の抜けた碧眼は きまつて看病に来る 白髪の生えた畳に サボテン植え 煎…

警句

警句 よすがらしぐれて あきのこぬものなし けいくのうらおもて かむもあじすらせじ ともからをつれるも にたりでよつたりで けつそうかえたるは はかのいろのみかな

無題

無題 白黒のテレビは今でも コバルトされた応接間にいる それを確かめるのもよい 錠前に手はかかっているのだから 町内放送のラジオは 都合、四度目の再放送だろう それは確かめるまでもない わたしはここにずっといたのだから

無題

無題 そらの欠片で解剖された 沈黙はなにも語らない ワルツは花瓶におさまって 物色づくレコードの針 いくら月灯のシールを こそこそ集めたところで 硝子の子猫は救えない 透明な二元論にももう飽きた 窓辺に座りあらためて あなたは青い髪を梳くだろう まる…

渡月橋

渡月橋 劣情の額縁に ドーラン塗られて もはや味すらわからない 消印のない金平糖 日活の地下街に (揺れる、オルゴール) 酒焼けした風景は おそろいの午後にたち まるで勘定のあわない空も とりどりに角度を変えて 生き写しのキネマ (色眼鏡、スプーン) 固…

双子の月

双子の月 西館の屋上は 石英水銀の壁紙でした 軽くなったシーツは 古ぼけたト長調 ふわりと行き交う電圧は 麻酔のきいた夜、奏で 双子の月灯りは 梯子を昇れませんでした ジッポ石を装填したり 鉄格子をけっぽったり きぜわしくちかちか 錨のない私のこころ…

無題

無題 暦のないカレンダーを めくるのは誰でもかまわない 千年もの長い季節は いつも病室に飾ってあるのだから あなたはあなたでなくなる いくら目をこすっても 本棚に並べたてられたワインに ラベルを貼られる事はない ホルマリンの波浪が 家にまでおしよせ…

ようじ屋

ようじ屋 インク切れの刻みを コツリやっては ざいなくて、木屋町闊歩 蜘蛛の子ちらして 幾らばかりか半月曇り 荒れる鴨の流れ ポツポツ詰所流れては みだりに引いたり 押したりで、せわしなく 瀬戸物あつめては ボタン止める暖簾やら 裁縫できない濁った酒…

電柱理論

電柱理論 電信柱は ネクタイ巻いて 下向きながら 新聞を読んでいた まるでアイロン かけたように しわのひとつなく すつくりとしたおれや マネキンのように ねりけしで顔を消された 通りすがる人々たちを その新聞の穴の中から じいつとみていた 斜視のあな…

迷い猫

迷い猫 月はまばたき (西欧でいうウインク) トンネルあいて ぴうぴう吹いた 点いたり消えたり 往来も、せわしない 痩せたろくでなし (微熱レコード廻る) 赤提灯ボタンを 縫いつけかけちかう かけつけ三杯ぶん 月のインクを飲んで ぶんまわしては 店じまい、…

掛時計

掛時計 ころあいみて 張り替えた障子は 化粧水のやうで べたべたしていた 風のはなびら 狂い咲き、でも 灯りはともらない ともはたらき 焼畑のにおいを 空の花瓶に詰めて 額縁にいれて 異邦人をじつと見る 骨のない家は まるで子供のよう 狼はいないけれども…

処方箋

処方箋 色白の告白は 前髪に少しかかり 薄紅の痛み止め 二錠ではきかない 悪寒も戯れ ひどく病的だつた ふいうちの 便りを待つひび それはなまくらで いやでもなまくらで 煮ても焼いても なみだは壁をうつ 浮いた義理すら ここにはあるのに おまえにはない …

所帯

所帯 よるの太鼓の あまりにひどく 嗚呼、糸の河 流るる血たまり かちんと鳴る もうもうはかない むらさきの 暗いせともの 背に佩いて あてどなく、 ゆらんゆらん 鈴虫おいかけては ほとほと、まいりて 頬紅の艶の出来 雨のみ綴りて ゆくばかり 火消しの鏡、…

南瓜

南瓜 日記に縫いつけた キヤタピラない日光や えびそりかえつた 青空いくばくも 松のはやしに ほうしいつくつく おろしたて 月の大根 軟膏つけて おそろの影を ふんだりけつたり ややこせわしく 字面通りを ああでもない こうでもないと レイゾンデイトルを …

けんばん

けんばん おそろしやいと こうべたれては まだおんぼろで あせだくだくといのりのあしは ぽろぽろかなで どまでせいこう ぴあののおとはちぐはぐきこみ せのびゆうくれ あまずつぱいと おもつたころにゆうとぴあとは ことあるごとに さあかすだつた おもては…

蒸発タブロイド

蒸発タブロイド 跳んで、折紙 色とりどり 盗んだ季節を ポラロイド (くだらないと) まさぐるやじるし 方位はずれて そこかしこでまるで 俺は着せられた (やはりそうです) こましやくれた 顎のない机たちは かどばつたエイテルを どばどば刷つて (ともだち…

西館電燈

西館電燈 わたくしは 十三の月を下車した かみを梳くやうに 稲穂はゆれ またわたくしは 青い戸をたたいて 廃院の屋上に いくつもならべた トランプや 失語症の洋服を おきにいりの それらもかわいて あおざめては ゴシツク調の符や ひびわれた月や 便りの入…

秋茜

秋茜 明日は高楼 手酌の線香花火に あぶら売つては 矢つぎばや くるひもくるひも 四の五の云わず しつくと佇んでは こう申すのです よく手入れされた ものですな、と 又、驢馬を 河原にうつて やけに耄碌した的に 俺は矢をかまえる つんだ泪のため池は 北の…

在る、電算とニッキ水

在る、電算とニッキ水 湿地帯はなかもずで あるいはニッキの空瓶か そらいろみずみずしく 合成硝子ばりついて おれも一体全体どうして汗を こうしてかいているのかと むぎわらのなかでふとおもう どうにもこうにも かいてみてはまたかゆく 広辞苑は油がみか…

町音

町音 火の娘にさそわれ タイポグラフは蔓のまま 揺れる表記、雨けむり とぼける半目こすつては 焼けた素肌に糸とおし おし通る小路の結び 米粒ひとつ、頬つけて ありんしたとつぶやいて そんなこともありんしたと 受け口でそつとつぶやき 河岸に肢体をあずけ…

盥吊り橋も手ぐすねひいて 黒板のうえではねる岩魚も からんころんと白墨で ひくらしもきつとそのやうか 馬力の八月かけぬけて ほおにつたう汗きつと ため池つくつているのだらう ひかりぬぐう風きつと この池つくつているのだらう この、ただれた憂鬱すら …

心象現像

心象現像心象ノワール ホチキスで止めて またばらして そんな熱病があり 景色をパチンと なんどもパチンと とめるばかりで わたしは改行され 現像されずに 仕舞いには其れを 諦めるのでありました

夢作

夢作にせての夢作に ときおり油をささねばと そう思って町へ出る のんべんだらり 真鍮細工の駅をぬけ がらがらかんかん ぶぁつい雲を眺めては ときおりふさいで (腕木式の錆びた信号)

サガン

サガンみずは化粧をして 鏡台のぶたいにたつ ろくにしらないと ふいにそうおもつては 花瓶につき刺さる 其のはなの名に うすい口紅をさして くるくるまわる(左眼の時計 ばねぴんネジとんで)

無題

無題青畳は てかがみで ぴんぼけては おひいさんにじむ 雨戸をたたくコツコツ たたいてまるでわたがしで まるでふいたビードロのやうに ふくらんでは夜のマントをまとう いきのはいつたぎやまんのはりこを 踊り子のいない六畳一間にぬいつけて 我、くるひも…

無題

無題わたしとあなたと 石の棺に黄昏がやってきて 賢者はなにもかもを告げる たとえ灰になろうとも丘のうえに鐘がなる それでもその手の震えを 愚者はとめることはできない いずれ翅をもがれようとも虱をはいた水無月は やがてそらの桶に暇を求め あなたに手…