電柱理論

電柱理論


電信柱は
ネクタイ巻いて
下向きながら
新聞を読んでいた
まるでアイロン
かけたように
しわのひとつなく
すつくりとしたおれや
マネキンのように
ねりけしで顔を消された
通りすがる人々たちを
その新聞の穴の中から
じいつとみていた
斜視のあなたは
どこからやつてきて
どういう理屈で
ここに立つているのか
そうたずねてみると
おれも電信柱だと
そう言うわけなのだ
ああ成程なと思い
裸電球と長方形の姿で
俺も隣に立つことにした
こういう理論である