無題

無題


ポプラの木でできた
砂時計のなかに
ひとりぽつねん座り
灰やらがいりまじつた
おまえやおれも
鼈甲いろに染まつて
鏡面仕上げで
そらもうもとどおり


(かつて皆が
  そうであつた様に)


廃屋にもかちこちの
射手座がおちて
黒曜石の雨戸にどんぐり
かんかん天の波浪


(はやいランプ
  おそいランプ)


腕木のおれや銀の梢たち
五線譜のレールや
加熱式の南天
三角帽子のマロニエにも
ファンデが塗られ
もうそれは女優のやうで
詰襟つけた早馬の風が
ビイダマの空を行き交う


(このうえなく平等で
  けたくその悪いもの)


おれのなめてしまつた
風景のひとかけらを
かけた椀のひとかけらで
接いだ冬のカンバス
どうにもひつくりかえらない