永遠も半ばを過ぎて

永遠も半ばを過ぎて





ああ神よ、われ飲みて一滴もあまさず
しかる後、杯を神に投げつけたりき
砕け散りにし正義の破片は干上がり
われが酒神に捧げし一滴をも
その破片に吸い取りたり
されど神は忍耐深く、色濃き葡萄酒を
後の収穫のために送りぬ




あまたの月過ぐる日々、我は生きたり
我再びここに来たれり
ペイシェンス・ワ―スこそ我が名なり




我がこと、汝らいずれ多くを知るべし
昨日は死者なりき




羊は風雨に迷い、めえと鳴き
丘々で羊は丘を迷いぬ
ローマ男どもは刃をあらはにし、
空気はローマの唇の囀りの祈りの叫びに満ちたり




堅琴を弾じ、これを愚か歌の赴くままに
ただよわするは愚者の仕業なり
賢者の手これに触るるをも厭う時に




然らず。汝は我を貴種とせるなり
我は東方よりの賢者にあらず
かの賢者の言葉終わることなきを願い
ペイシェンスなる御仁の壱百萬の話を書くも
忍耐以て待つものかな




永遠も半ばを過ぎた
私とリーは丘の上にいて
鐘がたしかにそれを告げるのを聞いた
私たちは空を見上げる。満天の星を
永遠の書物を
私とリーはまだその表紙を開いたところだ
いずれにしても、立ちあがりそして立ち去らねばならない
星々の香気を追って、旅を始めねばならない
私はリーの細い手を取った




聖地の雨期が終わり
なだらかな丘陵一帯は白い花々で埋めつくされた
その花の丘の中央に、一人の老人が襤褸をまとった
なかば狸の姿で口を丸く開けて立っていた
リーは老人に歩み寄って問うた
―何をなさっているのですか
老人は答えた
―私は立っているのだ
―長い間そうしてらっしゃるのですか
―長い間だ。日に二度、腰をかがめて花々の蜜を吸う
―それ以外はこうして口を開けて立っているのだ
―どうして立っているのですか
―たまに虫が飛びこんでくるからだ
―蜜の匂いのするこの口を、花芯に見まちがえた
―蜂や羽虫がやってくる。それが身の養いだ
老人はさらにリーに言った
―それに、こうして口を開けて立っているとわかるのだが、
―口に吹きこんでくる風にも滋養があるのだよ
―風にも滋養があるのですか
―ああ、ある。風にもあるし、陽や月や星の光にもそれがある
リーは老人の横に立つと、口を開けて長い時間をともにした
丘陵一帯の白い花々のほの甘い香りが
リーの口蓋と胸の中を洗った




岩はこう言った
永遠とは私、およびそこに転がっている丸太のようなものだ
切って開いてみよ。そこに切断面はある
これが貴方がたにとっての『世界』だ
しかしこの切断面に厚さはない
貴方がたは厚さのない世界に封じられている
この切断面の集積によって、
岩、丸太、宇宙、時間は形を成している
それがどういう形であるか、貴方がたに知る術はない