水浅葱
雪どけの柳ケ瀬
鉛筆のトンネル抜け
くるま引く乳母も
えちらとおちらと
これもまた変わるので
南天の其れとてや
縫い目と県境とおれと
暗転する洋菓子は
かんかん鳴る鳴る
そらは水風船で
ぱちんと割れては
みぞれやどれみを
あちこちにふらせ
冷たくしめつた
如月のおそろしさに
とがつたひかりすら
除雪されてしまう
このやうな有り様では
蝙蝠や猪の合皮では
間に合うわけもなく
誂えたひかりすらも
ぶかぶかなのだから
伊吹山のてつぺんは
オロナインのやうだ
あゝ、乳母は山菜と
どんぐりをひらうのか
さうやつてひらうのか
合掌造りのてのひらで
