アパートと隣人

アパートと隣人



荒れはてた廃屋シャープには
四角に浮かぶ花もなく、
前後に断絶された木蘭すら
おれには有難いものであると
丁寧に封をした景色なんぞ
まるきりオルガン調で揚羽なのだ
おまえが翅を活計にする為、
町々で首を垂れているあいだも
ここらの土地の諸事情は
料亭の生け簀であるからと、
これは煮付けであれはオパール
などとはぐらかす外にない
どうせ一筆書きの生なればと
このやうな不細工な感情ばかり
箸でつまんでは往来を行き来して
まともに案内をしておくれと、
あべこべの心身をコールする
ギラギラの西洋メスがいい
お客に出すなんてことも侭あって
ことに快気の日和になんぞには
幇間めいた真珠の車両部分を、
ワイヤー製だとおれは言い張るのだ
外人好みの意匠であつらえた
この集合の名前を三度も呼べば
ひとつのメルヘンにも成り得ると、
鼻梁をぐいと押さえるばかり