俯瞰狼狽

俯瞰狼狽



あの空の製鉄所で
いつもそうだつたのだから
これはなんてえ様だ
まるきり平仄の合わない
酷いあべこべ細工の姿見にも
ほこりのかぶる日もあるだろうよ
おれは一人で歩いていて
いつもそうであつたのだから
それを憐れむ事なんぞ
赦してなんぞやるものかよ
貴様なんぞは蟲鑑ではないか
刷られた硝子や瑪瑙やらが
どれほど恐ろしいかをいちいち
もうすぐ月光蝶も飛んで
そのようなかどかどしさすら...
これはもうもう具合の悪い
たとえばお医者のメスのよう
白痢のようなおまえの顔が
あれらに乱反射して目も眩む
たまたま天稟にめぐまれて
それが一体なんだというのだ
ここいらに仲立人はいないので
実費に検証で論文なのです
月の繭がどういう具合なのか
ろくすっぽ覚えていないくせに
ここから見上げる製鉄所や
それに類する各駅をおれは決して
三両編成のこころであるから...
ここらは風の吹きすさぶ
おれは鷹揚であるべきなのだ
ひたすらそう願うばかりなのです