競売

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衛星は泪のはごろもをすてた
あまのがわの河岸をすぎ
我はしわがれた老婆をレコードした
襤褸をかわりに針におとし
ちからのない隕石をふらせた
琥珀の落下傘で我は天上におりた
ながいたびのほそいうでを
しなやかにくねらせながらおりた
あまい桃のにほいがたちこめていた
あたりいったいに桃の雨がふった
屍をひろうようにこそこそぬすみ
またそれをオークションにかけて
金貨にかえてはくらしていた
のびやかなたべものだけが
とうとうと我をいやしてくれた
くさぞうしの古文書をひらいては
とじてたたんで、とじてはたたむ
あきるまでそれをくりかえしてから
いこいをもとめ浴槽へむかった
星の湯あみはとてもここちがよかった
我には紅いルージュの女がいた
いつもとおくからみつめているだけだった
女は西欧の絵画のような輪郭をもっていた
ないてもいいのに、女はなかなかった
女も泪のはごろもをおそらくすてたのだ
我はとうりつしたレコードのおとを
いくつもいくつもひろいあつめて
またそれをオークションにかけて
銀貨にかえてはくらしている
永遠をもとめさまようほそいうでを
みちとよべるものすらないみちを
くらやみのなかを雪洞でてらして
悪事をかさねながらくらしていた
そろそろ天下におりねばならぬのに
我にそのいしはなく、また女にもなかった
青銅の落下傘でいつかはおりなければ
地獄へとたたきおとされてしまう
されども、我にそのいしはなく
また、女にもそのいしはないだろう
ろくにかいわをしたこともないが
テレパシーのようなものでわかる
地獄への船便がでてゆくのをみつめては
したをむいて、なにごともなかったように
とげとげしい悪事をかさねていった
のみものがほしい、我らにのみものを
ただただ、それだけが我らのねがいだった