写生

写生






俺は脳から射精したいだけだった
中気は雨水から、砥がれた季節へ
とじられた鞄の中の数理的美文に
いかれた薬をほんの少し混ぜていた
スコッチを薄めたような煙が漂う
結核のような咳がこんこん鳴る
唖唖、こんな夜になにを求めようか
真理はいびつな慣性に追剥され
丸裸のおとめ座の信号機になった
ちかちかとなる、明滅しては消える
見失った彼女も消えて行って
しまいにはもう、俺も消えてしまった
宵は幾度となく俺をいためつける
脳から射精された物はただの石だ
路上の石ころはけだるい呪いだ
どうして祓うか、俺にはわからない
なぜならば俺は凡夫だからだ
祝詞が境内の賽銭箱にはいっていて
ずっとそこに居座っているように
石ころはただの石ころにすぎないのだ
唖唖、聾唖になってしまいたい
しまいたい、しまいたい、唖唖
清明の時節にはなっているかもしれない
俺はそれを切望せずにはいられない
貴様はなにを求めるのだろうか
貴様はどこを祈るのだろうか
千の言葉をもってしても足るまい
蒸発した季節がもうすぐやってくる
なぜダンテは俺を逝かせてくれない
俺はただ脳から射精しただけだ
金箔の棺に嫉妬しているだけだ
ただ、それだけのために書いて
書きためた物を吐きだしている
新緑の襦袢に恋をしてなにが悪い
どう悪いのだ、俺はそれを罰とは思わない
しかめっつらした聖人や僧侶には
まったくもってわからないことであろう
渇いた、飽きた、貴様らにはわかるまい
わからないのなら、しかるべき作法で
馬糞のような現世にしがみついていろ
ジムノぺティ―が永遠の書物なら
そこにとどまってしまうのならば
俺は貴様らにはもうなにも期待しない