2017-01-01から1年間の記事一覧

俯瞰耄碌

俯瞰耄碌 春のろくでなしは 厚塗りポラやカンバスで だのに黒糖ぼたぼたと せめて一列に並んでいろ 灰吹からのぞんだ空に 浮かぶ舟なぞあるものか ことさらに寒もきわどいです 黄ばんだ文士の囀りやらを 枕にしてみて思うことは こういうやうな幻想か おれに…

俯瞰生活

俯瞰生活 ぶあつい雲のランドリは くるくるでがらがらだ 精米所なんぞはいつさう暗い ぷかぷかタールにしけもく 模様変えした折にはとんとん 緞帳の降りて終まいには 空の化繊に引きちぎられる ぱちぱち鳴るは電灯に月灯り 三分の染井も漂白されて おれも米…

無題

無題 こんな配慮の足らぬ日は 脚の足らないグランド洋琴 ぽろぽろ化膿した雲間からは トンボのいちばん黒いので 俺の寝屋なんぞラフ画のやうだ 若し蕾が西洋ランプであつて つづら折りの今生を少しばかり そういう詐病もあるらしい あるいは俺もそのやうだつ…

俯瞰天球

俯瞰天球 水性の春雨パラム弾 冷気でほとほと疲れたのか 黒うさぎもいつからか あまり連弾をしなくなつた さんかくしかく独逸語で 左にはめこむ天球硝子 おれはそいつらが欲しい いちいち透明なやつをくれ 製鋼や三菱なんぞいらん お前たちのノギスの具合は …

雪恋

雪恋 滅菌いちごのガーゼに 春は流鏑馬なのでした 錐揉みスピンで乱気流 タルトの風に乗ります 恋のイマージュコイン 資産をいくら投げても 捏造する他ありません 雪だるま式に青空です 我が他が青春に縁あれ 縁一杯に注がれた黒豆 コメダのビーンズ煎り マ…

無頼の春

無頼の春 春はちゅんちゅん 床几に突っ伏し 陽も度のあっていない 一度眼科にかかるべきだろう 巻きをくゆらせては 伸びた髪をまとめている 歌留多の上の句やらを 庭にぱらぱら撒いていると これではいかん大火事だ 梯子の上で踊る花粉は きりはり太鼓の日経…

俯瞰貞操

俯瞰貞操 四月もたたらを踏んで あんず飴にベビーカステラ 姉は先ず弟に仮面を与え そうして屋台はトンビです 鮮度のよい春雨通らば せかせかと軒下に匿つて 二色刷りの空を睨めつける この時代のあれこれには よくよく色のあるものでして 洋風に倣えばカラ…

俯瞰喪心

俯瞰喪心 早春の晩、こふこふこんで たまらんと水道管の蛇口を捻り グラス一杯の釈文を飲む 蘭方医よりも覿面にカルキで 俺はようやく消毒された 双子の風はどうしてそんなに 素面でいられる物なのか けつこうで御座いますなどと おれにそつと囁いては アラ…

スプーン匙

スプーン匙 漂白された日光とは めいめいが桃色なので 足湯もブランドという訳です あまりに群青は舶来物で 恋も韜晦する他ありません 白梅のビー玉ころころ 活動写真のフイルムのやうな つぎはぎだらけの春でした もうすぐ小匙一杯の夜が来て やんややんや…

蓬莱山

蓬莱山 此の世の沙汰も 箪笥に薬包紙なれば 畢竟、大業成らずして 春の浮舟カルストの 麓に流るる下物の如く 人も魚も生甚だしき 故事に倣わば夢応也哉 俎板の上の膾にも 等しく春は行き訪ふ

俯瞰洒脱

俯瞰洒脱 ワセリンなのです 言語藝術は オーガスタの痴情も ロダン的省察によれば まさに一つの恋なのです ちいさい小梅の硝子玉 鑑定書のないメルヘンは 簀巻きかまぼこ春鰆

俯瞰波浪

俯瞰波浪 郵便受けのなかは 初恋の味でいつぱいだ あるいは横恋慕か ときおり督促だつたりする せわしく入れ替わる もうおれなんぞは 巨大なコイルの原理で 変圧器のない放電魚のやう 一体どこぞの寓話から 宛名のない便りなんぞは 送られて来たのであろうか…

片思い

片思い(曲後付け) 十八そこらは水玉で ピンクの雨に透ける制服 鏡の前で前髪作つては 校門前で俯いてビニール持ち 赤いリボン下げ待ち伏せる 鳴らない電話と箒の夜と 背伸びで削れたローファーと 恋の踏切はカンカン鳴る 空のブランコはゆらんゆらん ベッド…

此解剖図

此解剖図 蘭学に於ける解剖なるは 実に恐ろしくぎらぎらして あれは前衛的に過ぎる 俺なんぞは韜晦してしまうだらう たといばシェフィールド製 或いは海月のやうな類の 心遣いぐらいはすべきなのだ いくら混濁していやうとも そのやうな鉈や庖丁でなどで 切…

アラビアの夜

アラビアの夜 あたら夜に思ふのです ひやこいのはどういう様だ 白壁に赤字で書いても まるきり酔いの回らない 俺であつたりなかつたりする 烏有なれば正気もさうで ふらふら灌木に寄りかかる 割れた酒瓶からはどばどばと 蝶が出たり亀が出たりで これがもう…

俯瞰瘋癲

俯瞰瘋癲 晴天もたゆとうて かりかりとタービン廻し もう美ケ原は水墨なのでした 気圏に列なる腕木の雲の あれやこれやを学者のやうに 観察してはノートしたり 目玉なんぞ振り子のやうです あるいは気のふれた楽隊か 陽だまりも発条巻いて 発条ピンのいかれ…

俯瞰戀愛

俯瞰戀愛 こんな片田舎には 身を立てる術など大凡無く めいめい日々辛酸を舐め 工場やらでがらがら働いては 一日の恥を安酒で流し 千鳥でゆらゆら午前の様 私のやうに血迷う暇も ろくすぽ有りはしないもので 有体に云えばこうなのです ダダの輩のろくでもな…

早春狼狽

早春狼狽 ここらはもう 蚊帳のやうな月灯りで なにも憔悴せずとも まあるいやらなにやらで いつぱいではないか 俺は木製の林檎なので このやうな様なのだ たれか小火をおこしてくれ 月に口紅をぬるやうに 夜のカヌレのいつそう暗く だのにこころは透明で ぽ…

電力會社

電力會社 ひいらぎは指先で 風などは手書きでありました ぽふぽふ揺れるステンドに カラメル色のわたくしは 寡婦のやうな心持ちでした あるいは落第した天使でせうか ぴうぴう横切る横切る マルメのバス停にぽつり居て 花瓶の香豌豆は硝子細工 チョークの春…

円錐角膜

円錐角膜 手前のロンパリ眼鏡には この田舎がどうにも独逸に見え いよいよこれはと思うのです あの鉄筋の電波塔なんかは ごつごつとしたゲルマン人のやう (儒徒にも超越論理的な現象が 円錐の屈折率の所為だらうか) 手前など孝悌すらままならず こすつてはこ…

アルトの傘

アルトの傘 トレンチ羽織つた二月の底は 一体どちら様でせうか 雨も惚けて畷もぴかぴか ぽつりと雑居ビルの屋上に居て (原生天は軽く三棟分上にある) 彼処でさりさり鳴つているのは おおよそ俺という存在 三色刷りの念力ですら 空にもいろいろな事情が在ろう…

俯瞰殺風

俯瞰殺風 なまりのなまりで どうにもよくない晩冬だ 文鎮のくもの重さは きつと此のてのひらにさえ おれにはそう思えて さりとて的外れでもあるまいし 心の比重はてんびんです 俯瞰のない行軍のやうでした ゆきもちらちら焦げついて ラフスケツチあさつゆに …

鉄塊

鉄塊 漂白された苺のやうな このぐずぐずの空のした 直流のやさぐれに ぽつぽつ降る雨ゆずは トランとライザと そのやうな兄妹であるやうで 或いは相当に倒錯めいた ひとつの幻覚なのか これこれこのやうな所為で 成程これでは巻紙すらも むかうのくぐもつた…

旧節

旧節 睫毛の長い夜の名も 裁ちばさみでばらばらで あゝ南天なんぞ白化粧 瓦斯燈でくもつた硝子が 障子のやうにみえるのは プラテツクのせいだろうか これはどうしてかしらんと 芦毛のはえた郵便受けに じつとじつと佇む旧節 色鉛筆でたとふなら 一体どのやう…