無題

無題



こんな配慮の足らぬ日は
脚の足らないグランド洋琴
ぽろぽろ化膿した雲間からは
トンボのいちばん黒いので
俺の寝屋なんぞラフ画のやうだ
若し蕾が西洋ランプであつて
つづら折りの今生を少しばかり
そういう詐病もあるらしい
あるいは俺もそのやうだつた
流行りの道化には処方箋を
今の俺には二色刷りの春でした
暗い夜道を照らす花林だけが
海月のやうなこころに甘く
斜行した消印の無い風景にすらも
ほんのりやんわり染みるのです