早春狼狽

早春狼狽



ここらはもう
蚊帳のやうな月灯りで
なにも憔悴せずとも
まあるいやらなにやらで
いつぱいではないか
俺は木製の林檎なので
このやうな様なのだ
たれか小火をおこしてくれ
月に口紅をぬるやうに
夜のカヌレのいつそう暗く
だのにこころは透明で
ぽんかん色の糸くずだらけ
これも変わるのでせうか
朝摘みも変色は免れませんか
銀のスプウンに映りこむ
おまえの活動写真は
もうまあるいやらなにやらで
一つの恋の亜種なのでした
そのやうに思えてなりません