杉山トローメライ

杉山トローメライ



俘囚のごとき風袋で
背にもたれるなにものか
おまえは古体の簪で
先方のお歴々を前にしても
そのやうに鬼灯なのだ
それはそれで立派ではないか
得心の行くまで漕いで
金森から出でて果樹園へ
はたまたフルムーンの傍まで
風はきりきり砂塵もはらり
嗚呼、トローメライの美しき
あの農園で麦わらおさえ
パチンとホチキスした髪を
おれはきつと忘れない
だからこうして縫いつけては
こころの活動写真を廻す
この淡いお揃いのブラウス
きつとママが腹を立てる事だらう
或る日の情景と新聞ぱらぱら
ピアノにもたれさようなら妹よ
おれは白靴のペダルを踏む