心中モノクローム

心中モノクローム




雨模様の落書き染みて
 線の細いやつや太いやつ



 てぬぐいの調子の狂つた
  これではまるで看病できぬ



かさかさのひらを額に入れ
 名無しの権兵衛の芒となり候



 このような化粧のあるものかと
  納屋に匿うやうに或いは泥棒か



へどろのついた窓を見て
 はあとやらば息ものつぺり



 ドライフラワーの手前には
  白や黒ばかりでもう沢山でして



胡蝶や砂糖水の逸話のやうに
 これがたとえばの話であればと



 茶店の窓辺にもたれかかり
  ハチミツも烏有でありますれば



これは変わりますかと宮沢は問い
 蚊帳の中にいる妹に忙しく駆けては



 どうかこの精神が蒸発せぬやうに
  嗚呼まるで熱が引かぬではないか