無題

無題



なにがしは氷嚢に
枕と異邦人は恋をして
夏の甘草ビオラ鳴れ
ファルトの割れた弩の張りを
波浪にならべては
ぱちぱちと調子の狂う
弾きの硝子の流れ着いては
天のお供え物になれやと
はいいろの風や
物珍しい日々の出来事を
よくよく陳情したのですから
そうなるべきなのです
女に生まれたが為などと
便りには聴いていたけれど
七十余年前の貝殻を
集めてその指で弾いているのは
営みのほかにありえません
ええ主張すべき延長の戯れに
ぷかぷかと浮いている
八月のコスモスや
くちなしの花きたると妹が
まちがいなくそう云い
ケフケフうるさいオルゴール
比丘尼の暦を歩いている
確かにそう聞えたのだ