ボイラーとリネン室

ボイラーとリネン室



八月は黒スーツ
とっちらかった町を行く
送電線でぐるぐるで
月の消灯後の
療養所のリネン室は
洗い立てのカンバスで
朝の日光に油彩であるから
おれも立ち去るほかない
もよりの明かりは
屋上から望む藪ガラシで
あとは黒い実のような
そんなようなものが点々と
ここはそれだけなので
黄道を行くあの変奏曲は
蜘蛛の腹のなかだらう
あるいは分厚いアルタイル
小さなオルゴールも
夜風には流されて
かつかつと階段を降りる
そういう宗教もいいものだ