刺殺

刺殺


ゆきすぎし日
濡れた丸眼鏡のむこうは
通常運行(車馬賃四百十円也)
お部屋のなかの電鉄は
にしき市場行であつた
お臼でひいた白墨や
うおのたなの赤提灯
てくてくすぎては
すぎゆきし火
漬けた商店街のてのひらは
運休見送(煙草賃四百六十円也)
寺町ついでにふらりより
みかえり大路にうしろ髪
黒塗りの厚化粧が
一間さきをゆきかつて
やうやうやくの在りし碑
大丸のかげふんで
菊花のあれらをただ眺める
水銀灯のころあひには
六曜舎やからふね屋
みかえり大路にまとめ髪
くるくるまわる珈琲は
つむじかなにかのやうだつた