2014-06-25 幻灯 石 幻灯 幻灯にこがれたひとみ 白黒の写真を花瓶にさし 部屋にぽつり佇んでいた コチニールのやうだつた あるいは棗のやうだつた よるはあかく染められた 牢からいくら手をのばしても けつしてとどくことはない 若い書生の書く小説だけが その少女をたのしませた 少女はあおい幻灯であつた 琴の音と春をまちわびて 座敷のおくでわらつていた しずかに少女はわらつていた