河童

河童



矢鱈と改行された砂子の泊り
ほうしいつくつく毬栗頭
さげた盆のころあいには
頭巾のおくでわらつています


お鏑なつてはお鐘もなり
駒のおんもぴたんとなつた
くらかえした文月の馬は
かけあしでかけはしです


女中にぼんをもたせては
ことくるたびお茎渡します
ビイドロお舟で渡します
すきまのおくでないている


するめのやうな風がふき
一花咲いてこころ凪ぎました
こうゆえばよいのでせうか
わらつていたのはたれですか


お月に巾着ぶらさげて
ついについには油紙となり
お盆はひつくりかえりました
貴女の一花をつみませう


かわの河童のなみだの痕
かがみは歩をするめるのです
蟻のやうなひとのむれ
わらつていたのはたれですか


たらればとあらんことを
わたしはしつていたのです
ひつそりとわらつていたのです
お藪のなかはこつそりでした


お月はまばたきをわすれ
お蕎麦をたべておりました
そのやうなことをじつとみて
わらつていたのはたれですか


貴女の一花をつみませう
きつとつんでみせませう
小雪のちらつくなつのなか
わらつていたのはたれですか