華奢の客

華奢の客


いざ黄色い季節になりますと
ゆで汁かいた煎餅布団に
薬缶もぴうぴう鳴りました
かはたれなる真夜中の甲板は
ビロウドの中の迷い猫
或いは余等一行やもしれません
たといば辺鄙の一行が
おのずから仏蘭西訛りで
万斛の愁いをノオトしたり
薄荷のやうな心持ちを
いちいち符にしたりします
まるで万華の色がみです
我は庇に吊るされ屈託気で
杳然とぴうぴう云うばかりです