アドニスと釣人

アドニスと釣人



片田舎のアリスに日は照つて
あたりは銀紙はらはらはらはら
もうさつぱりと青ざめたから
おれはやうやくレンズを嵌めて
手広くやつておいでですな
などと云ひ手札を屑籠にほおる
これらをニヒルなどと形容するに
他ないのはあまりにも傷んだからで
ありますひねもすとうへんぼくは
こうして無地のカデガン羽織り
空のセロハンに啖呵をきらば
あたりもすげなく物欲しい
おれがへつらい上戸の魚であらば
どんなによかつたであらうか
夢中をグルリと泳ぐ鯉のインチを
たかが四十などとはお小言を
まるきり政治家のやうな難癖である
そらの波止場にプカプカ浮いて
これはデリダであれは白頭なのだからと
傷絆をひみつの園にぴたりと張つて
タモですくうやうな具合で訊く
付箋のずれた私小説のやうですなあと
なにせおれは檸檬チエロなのだから
はらやのやうな白いチョークと
ぷらすにアルフアにたちつて豆腐
いかにせんせん献立こんざつで
おのが非才をこんこんと嘆いては
たといばそれは気のふれた主婦
へだててよいのはなにゆえか
おまえは首尾良くいつもパタパタ
いかりの無い家のナイフなのだから
この出来合いの骨董のがらくたに
若しひとつ名をあてがうのであらば
大きなほたて耳当てにかいがらか
とおく潮騒にたちんぼしては
むかうにとほくそらは行き過ぎにし