乗車場

乗車場


一条寺の駅長はピアノだつた
ぐびぐびと鉛筆をのんでいた
わたしはじつとただ切符であつた
長椅子のやうな雲が浮かんでいて
わたしはそれらをじつとみつめていた
まるで古本のやうな景色が
いくつかのいつかをなんども
なんどもいつたりきたりしていた
三番乗場の写真をきりとつて
原稿のうえにミシンで植えル
それはまるで明滅する√のやうで
いぶかしげにわたしはそれをばらした
パイプとタイポグラフだけが
駅の乗車口にきちりとならんで
(それでわたしは詮無くて)
のみほしたみどりいろの活字を
そらのミシンでぬいつけた
ろくでなしのわたしはだつた
ひとでなしのわたしはだつた
現場おさえた五番乗場で
わたしはおそろしく幻滅した
いくつかのいつかをなんども
なんどもいつたりきたりしていた
白い原稿のやうなこころが
せわしくそこらをゆきかつて
信号機の髪をわたしはほどいた
雪どけのこころと標識は
いつかの撫で肩の君のやうだつた
(それでわたしは詮無くて)