桜心中

桜心中


おぼろ月夜にふる雪は
ちらほら流れておりました
八洲におよぐこざかなは
塩ドロツプのやうでした


ひとつ盲をくらつては
かたほう漕ぐほかありませぬ
たしか縞模様の春でした
まるで丈のあわない雨でした


吹雪舞いちるメイビーは
はらりと投げ銭にぎわしく
高瀬に灯ろう流れては
せわしくゆきかう人ばかり


あてのない酒のやうな
にごつた河岸にたたずんで
のらりとくらりと夕闇に
浮かぶ花はまるで琴でした