無題

無題

詐病につかれた時計は
決してうつつを裏切らない
秒針は北の方角を示す
わたしもあなたも旅人であった

葡萄酒はいつも語らない
そろそろ錨をおとしてもいい
金具のない夜はつまらない
あなたはもう知っているのだから

鏡のまえのあなたは
静物画のなかの果実を食べる
よりよい種を植えるといい
ここに安住するのもよいだろう

煙の魔人があなたを訪ねる
それを決して拒んではならない
あなたはもう知っているのだから
砂時計の形をした老人の名を