月光と貴婦人

月光と貴婦人



眼瞼から伸びる針金は
ガリガリと手動のショパン
絹糸のやうにいちめんを
雨や日照りや雪などで
県道の細いのはおれがよく
ぷかぷかやるからに違いない
ええええさうですとも
きつとここらが痩せたのも
あのやうに金魚は空を泳いで
煌月のした博識ですなと
顎に手をやり無精も生えぬ
移り気な映写機をガラガラ廻す
シルクハットの貴婦人が
多面鏡の田んぼにいるやうな
そんな静かな夜と糸杉